以下は、朝日新聞デジタル(2013年10月28日)からの引用です。
「子どもの教育資金をためる「子ども保険(学資保険)」で、支払った保険料よりも受け取る額が少ない「元本割れ」が起きたとして、大阪府に住む男性(51)が元本割れした分を返すよう求めた訴訟が大阪高裁であり、今月、和解が成立した。
元本割れ分の返還を高裁が勧告し、保険会社が受け入れた。
元本割れの穴埋めを高裁が勧告したのは、保険を勧めた外交員が、元本割れする可能性について十分説明していなかったと判断したためだ。
金融トラブルに詳しい弁護士によると、子ども保険の元本割れは最近相次ぎ、訴訟も多いが、生保会社がその穴埋めに応じるのは異例という。
同様の訴訟に与える影響は大きく、生保各社に今後、説明の徹底を強く促す効果がある。
和解が成立した子ども保険は、この男性が生保大手の住友生命保険と契約した「ちびっこライフ」。
長女と長男のために1992年と95年にそれぞれ入り、どちらも満期18年だった。
入るときに、住友生命の外交員は、受け取る額が右肩上がりになるグラフを示し、満期時の総額をそれぞれ「約430万円」「約302万円」とする提案書を示した。
ところが、長女の保険は2010年に受け取った額が約259万円で、提案より約170万円少なかった。
長男の保険は11年に途中解約し、受け取ったのは約225万円だった。
この男性は、住友生命に払い込んだ保険料(元本)はそれぞれ約273万円と約253万円だったので、受け取った額との差(元本割れの額)は計約42万円だったと主張した。
提案書には「利率は経済情勢により今後変動することがある」と小さく書かれていたが、元本を下回る可能性には一切触れなかった。
このため、この男性は、説明が不十分だったとして元本割れの穴埋めを求めていた。
一審の大阪地裁の判決は、住友生命側に説明義務違反があったと認定し、請求額の5割にあたる21万円の支払いを認めた。
男性は大阪高裁に控訴し、和解が今月23日に成立した。
訴訟を担当した中嶋弘弁護士は「子ども保険の訴訟で請求額を勝ち取ったのはおそらく初めて」といっている。
保険商品に詳しい「家計の見直し相談センター」の藤川太氏は、「子ども保険は『預貯金と同じような商品で元本割れしない』と思って入る人が多い」という。
だが実際には、「超低金利なので、様々な運営費用を差し引くと元本割れしやすい。満期がきて元本割れに気づき、不満を抱える人は多いが、これまでは泣き寝入りするしかなかった。今回の和解が生保業界に与える影響は大きい」と指摘する。
和解について、住友生命の広報担当者は「個別の事案についてはコメントは控えたい」としている。
子ども保険は、バブル経済崩壊後の超低金利で、運用難に陥っている商品が多いとみられる。
今後、バブル崩壊後に契約した人たちが相次いで満期を迎えるため、元本割れをめぐるトラブルが増えるおそれがある。
〈子ども保険(学資保険)〉
子どもが高校や大学に入るときの資金をためたい人のための保険商品。
「元本」が事実上保証されていない商品が多い。
その場合、保険会社が契約者から受け取った保険料を金融市場で運用し、その結果次第で契約者に払う額が変わる。
親が亡くなると保険料は免除され、本人が亡くなると死亡保障金も支払われる。
保障が手厚いと保険料が高くなり、元本割れしやすくなる。
生命保険協会によると今年3月末時点で契約数は588万件、満期時にもらえる額の想定は約13兆円にのぼる。
今回和解が成立した住友生命保険の「ちびっこライフ」は1990〜2004年に売られ、今年9月末時点で約12万件の契約が残る。」
1審の大阪地裁は、5割の過失相殺をした上で半分だけの支払を認めたのに対して、大阪高裁が、判決となれば、過失相殺なしの全額の支払を認める判決となる旨の心証を開示、高裁判決を受けて最高裁に上告しても、事実認定の問題なので、覆る可能性がなく、実務に与える影響が甚大なので、やむなく和解に応じたということでしょうね。
確かに、「提案書には「利率は経済情勢により今後変動することがある」と小さく書かれていたが、元本を下回る可能性には一切触れなかった。」とのことですので、過失相殺をする理由もないように思います。
恐らく、保険会社側としては、和解条項に、この和解の内容を口外しない旨の条項を加えることを求めたと思いますが、男性側が拒絶したため、そのような条項のない和解となり、この報道に至ったということだと思います。
和解といえども、実務に与える影響は大だと思いますが、我々は、年金制度について、国から、将来、受給開始時期が遅くなったり、受給金額が減額になる可能性など、一切説明がないまま、長年支払って来ているのですが…。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ