2013年10月26日

覚せい剤密輸、逆転有罪確定へ=英国籍の男、裁判員で無罪―最高裁


以下は、時事ドットコム(2013/10/22)からの引用です。

「スーツケースに隠された覚せい剤を密輸したとして、覚せい剤取締法違反などの罪に問われた英国籍の地質学者ソウヤー・ジョフリー・ロバート被告(56)について、最高裁第1小法廷(横田尤孝裁判長)は22日までに、被告の上告を棄却する決定をした。

決定は21日付。

一審裁判員裁判の無罪判決を破棄し、懲役10年、罰金500万円とした二審判決が確定する。

覚せい剤密輸事件で、裁判員裁判の無罪を破棄し、逆転有罪とした二審判決が最高裁で確定するのは2例目。

第1小法廷は決定で、密輸組織が密輸先で運搬者から覚せい剤を確実に回収できる事情がない限り、運搬者は組織から回収方法について指示を受け運搬を委託されていたと認めるのが相当と判断した。」




早速、裁判所のホームページに掲載されていますね↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83676&hanreiKbn=02

「1,2審判決が前提とするとおり,本件覚せい剤の量や隠匿態様等に照らし,本件密輸には覚せい剤密輸組織が関与していると認められるところ,原判決が説示するとおり,密輸組織が多額の費用を掛け,摘発される危険を冒してまで密輸を敢行するのは,それによって多額の利益が得られるからに他ならず,同組織は,上記利益を実際に取得するべく,目的地到着後に運搬者から覚せい剤を確実に回収することができるような措置を講じるなどして密輸を敢行するものである。そして,同組織にとってみれば,引き受け手を見付けられる限り,報酬の支払を条件にするなどしながら,運搬者に対して,荷物を引き渡すべき相手や場所等を伝えたり,入国後に特定の連絡先に連絡するよう指示したりするなど,荷物の回収方法について必要な指示等をした上,覚せい剤が入った荷物の運搬を委託するという方法が,回収の確実性が高く,かつ,準備や回収の手間も少ないという点で採用しやすい密輸方法であることは明らかである。これに対し,そのような荷物の運搬委託を伴わない密輸方法は,目的地に確実に到着する運搬者となる人物を見付け出した上,同人の知らない間に覚せい剤をその手荷物の中に忍ばせたりする一方,目的地到着後に密かに,あるいは,同人の意思に反してでもそれを回収しなければならないなどという点で,準備や実行の手間が多く,確実性も低い密輸方法といえる。そうすると,密輸組織としては,荷物の中身が覚せい剤であることまで打ち明けるかどうかはともかく,運搬者に対し,荷物の回収方法について必要な指示等をした上で覚せい剤が入った荷物の運搬を委託するという密輸方法を採用するのが通常であるといえ,荷物の運搬の委託自体をせず,運搬者の知らない間に覚せい剤をその手荷物の中に忍ばせるなどして運搬させるとか,覚せい剤が入った荷物の運搬の委託はするものの,その回収方法について何らの指示等もしないというのは,密輸組織において目的地到着後に運搬者から覚せい剤を確実に回収することができるような特別な事情があるか,あるいは確実に回収することができる措置を別途講じているといった事情がある場合に限られるといえる。したがって,この種事案については,上記のような特段の事情がない限り,運搬者は,密輸組織の関係者等から,回収方法について必要な指示等を受けた上,覚せい剤が入った荷物の運搬の委託を受けていたものと認定するのが相当である。」とのことです。

上告棄却決定といえば、いつもはいわゆる三行半なのですが、最高裁が、わざわざ職権で判断して、「ちょっと待ってよ裁判員の皆さん。覚せい剤だとはっきり伝えるかどうかは別として、何億円もの利益を生み出すブツを、確実な回収の目途もなく、運ばせる訳ないでしょ。知らなかったを真に受けないで下さいよ。」と言っている訳ですから、実務に与える影響は甚大でしょうね。

まあ、密輸組織側としては、今度は、この判旨に沿った言い訳を考えるのでしょうが…。

札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
posted by 森越 壮史郎 at 17:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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