以下は、朝日新聞デジタル(2013年09月28日)からの引用です。
「受刑中の選挙権を認めない公職選挙法11条の規定が憲法に違反するかどうかが争われた訴訟の控訴審判決が27日、大阪高裁であった。
小島浩裁判長は「受刑者の選挙権を一律に制限するやむを得ない理由があるとは言えない」と指摘。
受刑者をめぐる公選法の規定が、選挙権を保障した憲法15条や44条などに違反するとの初判断を示した。
最高裁は2005年9月、海外に住む日本人に選挙権を認めないのは「原則として許されない」として違憲と判断。
今年3月には東京地裁が、後見人がついた知的障害者らに選挙権を与えない規定を違憲とするなど、選挙権拡大の流れが進んでいる。
今回の判決も、こうした司法判断に沿ったとみられる。
小島裁判長はまず、選挙権について「議会制民主主義の根幹をなし、民主国家では一定の年齢に達した国民のすべてに平等に与えられる」とし、選挙権の制限はやむを得ない理由がなければ違憲になるとする最高裁の判例の基準に沿って判断すると述べた。
そのうえで、受刑者について、「過失犯など、選挙権の行使とは無関係な犯罪が大多数だ」と認定。
国側の「受刑者は著しく順法精神に欠け、公正な選挙権の行使を期待できない」とする主張を退けた。
さらに、憲法改正の国民投票については受刑者にも投票権が認められており、受刑者に選挙公報を届けることも容易だとし「不在者投票で選挙権を行使させることが実務上、難しいとはいえない」と指摘。
単に受刑者であることを理由に選挙権を制限するのは違憲だと結論づけた。
訴えたのは、道路交通法違反罪で受刑中だったため、2010年7月の参院選で投票できなかった元受刑者の稲垣浩さん(69)=大阪市西成区。
公選法11条の規定に基づいて選挙権を否定され、精神的苦痛を受けたとして国に100万円の国家賠償を求めていた。
判決は、賠償請求については棄却するなど稲垣さんの訴えを退けており、「勝訴」したのは国側となる。
民事訴訟法に基づき、敗訴部分がなければ上訴は認められないため、稲垣さん側が上告の手続きを取らなければこの違憲判決が確定し、国会は法改正するかどうかの判断を迫られる。
一審の大阪地裁判決(今年2月)は「受刑者が一定の社会参加を禁じられるのはやむを得ない」として、規定を合憲と判断。
稲垣さんの訴えを退けていた。
■更生や社会復帰の一助に
北村泰三・中央大学法科大学院教授(国際人権法)の話
多くの先進国は受刑者に選挙権を認めており、今回の判決は世界的な流れに沿ったものだと言える。
国民の権利である選挙権を、一律にすべての受刑者から奪う公職選挙法が変われば、評価に値する。
受刑者が投票する機会を得れば、政策や社会問題について考えるようになり更生や社会復帰につながると思う。
海外ではフィンランドやスイスなどすべての受刑者に認めている国があれば、ドイツやフランスなど量刑の軽重といった一定の条件付きで認めている国もある。
今後は犯罪被害者の感情を懸念する声もあると思うが、法改正の議論が進められていくことを期待したい。
〈公選法11条〉
国政と地方の選挙について、「選挙権及び被選挙権を有しない者」として、「禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者」(受刑者)や「選挙、投票及び国民審査に関する犯罪により禁錮以上の刑に処せられその刑の執行猶予中の者」と定めている。
ただしいずれも確定前なら勾留中でも拘置所から不在者投票が可能。
選挙関係以外の犯罪なら執行猶予中も制限はない。
認知症や知的・精神障害などを理由に成年後見人がついている人にも制限規定があったが、東京地裁が今年3月に違憲判断を示したため、これを削除する改正公選法が5月に成立した。」
裁判所のホームページには、掲載されないようですね↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0020Recent?hanreiSrchKbn=04&recentInfoFlg=1
違憲と判断しながら、慰謝料を認めないのは、なぜなのでしょうかね。
国家賠償法1条1項は、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」と定めています。
金額はともかく、精神的な苦痛を受けたことは間違いないので、「損害」は明らかです。
となると、違憲ではあるが、2010年当時は、違憲という判断はなかったので、「違法」ではないということでしょうか。
それとも、同様の理由で、「故意・過失」がないということでしょうか。
国側の上告を封じるための結論ありきという訳ではないとは思いますが…。
きちんと最高裁で決着をつけるべき問題なのではないかと思いますが、元受刑者側が上告すると、慰謝料を認めないという結論は変わらないまま、違憲という判断自体が覆る可能性もあり、リスクが大き過ぎるようにも思います。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ