2013年09月30日

匿名起訴状、模索続く=「被害者保護」「被告防御権」−最高裁、日弁連に意見求める


以下は、時事ドットコム(2013/09/23)からの引用です。

「性犯罪などの裁判で被害者を守るため、検察が起訴状で被害者の実名を伏せるケースが相次いでいる。

被告の防御権が十分に確保されないとの懸念もあり、裁判の現場では模索が続く。

最高裁は日弁連に意見を求めるなど、対応に乗り出した。

被害者が匿名の起訴状をめぐり、裁判所の判断は分かれている。(1)被告側に反論の材料を提供する(2)犯罪事実を特定させる−として実名を求める場合もあれば、他の記載によって被害者が特定されているとして完全匿名を認める場合もある。

最高裁の司法研修所は今月中旬、全国の裁判官らによる意見交換会を開催。

再び被害に遭う恐れが高い場合は実名以外の記載をする必要性が高くなるが、一方で被告の防御権の観点から弁護人には実名を知らせる必要があり、証拠や判決も実名が望ましいとの意見で一致した。

ただ、起訴状だけでなく、証拠や判決によっても被告に実名が伝わらないようにしなければ、被害者保護の実効性はない。

刑事訴訟法では、検察官は被害者を特定する情報について被告に知られないよう弁護人に求めることができると規定されているが、これでは実効性が担保されているとは言えないとの意見も出た。

この点については、検察関係者も「現状では被告に教えないよう、弁護人にお願いするしかない」と話す。

ある裁判官は「起訴状だけの問題にとどまらない。名前を出す前提で法律ができており、運用によって対応するには限界がある」と指摘した。」




「刑事訴訟法では、検察官は被害者を特定する情報について被告に知られないよう弁護人に求めることができると規定されている」というのは知りませんでしたが、下記の条文のことでしょうかね。

第299条の3  検察官は、第299条第1項の規定により証人の氏名及び住居を知る機会を与え又は証拠書類若しくは証拠物を閲覧する機会を与えるに当たり、被害者特定事項が明らかにされることにより、被害者等の名誉若しくは社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認めるとき、又は被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくはこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは、弁護人に対し、その旨を告げ、被害者特定事項が、被告人の防御に関し必要がある場合を除き、被告人その他の者に知られないようにすることを求めることができる。ただし、被告人に知られないようにすることを求めることについては、被害者特定事項のうち起訴状に記載された事項以外のものに限る。

だとすると、「ただし、被告人に知られないようにすることを求めることについては、被害者特定事項のうち起訴状に記載された事項以外のものに限る。」ということになっていますので、起訴状に記載されていれば、被告人には隠しようがないことになります。

ただ、このような規定があることから、被害者が匿名の起訴状でも可と解釈できるのではないか、ということになるのですね。

日弁連に意見を求めたとのことですが、日弁連には、刑事弁護センター↓という被疑者・被告人の権利を保障するための委員会がある一方で、犯罪被害者支援委員会↓という犯罪被害者の権利を保障するための委員会もありますので、結論は簡単には出ないように思います。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/reforming/kokusen_touban/keiben.html
http://www.nichibenren.or.jp/activity/human/victim.html

札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
posted by 森越 壮史郎 at 12:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック