2013年08月27日

被害者保護で被告名伏せる 淫行罪の元教諭、宇都宮地裁


以下は、日本経済新聞(2013/8/22)からの引用です。

「教え子にみだらな行為をしたとして、児童福祉法違反(淫行させる行為)の罪に問われた宇都宮市立中学の元男性教諭(32)=栃木県真岡市=の21日の初公判で、宇都宮地裁(水上周裁判官)が、被害者の特定を防ぐため、被告の名前や住所を伏せて審理していたことが、22日分かった。

公判で被告の名前を明らかにしないケースは珍しい。

公正な裁判の実現が課題となる。

人定質問は行われず、事前に氏名や生年月日などを記載したカードを被告が確認。

検察側も氏名部分を「被告」として起訴状を読み上げた。

被害者の名前や中学校名も明らかにしなかった。

起訴状などによると、元男性教諭は1月19日、中学2年で14歳だった女子生徒が18歳未満と知りながら、宇都宮市内のホテルでみだらな行為をしたとしている。

弁護側は事実関係を認めた上で、2人は交際していたなどとして「淫行には当たらない」と無罪を主張した。」




これは確かに珍しいかも知れませんが、被告人である男性教諭は、被害者である教え子の氏名・住所等を当然知っているでしょうから、被告人に知られたくないという訳ではなく、公にされたくないということで、起訴状自体には、被告人の氏名・住所等も、被害者の氏名・住所等も、記載されていることでしょう。

裁判所が、公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる被害者特定事項は、「氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。」とされています(刑事訴訟法290条の2)。

被害者の氏名・住所等を秘匿しても、被告人の氏名・住所・勤務先等が公になれば、同級生などにはすぐにわかってしまうしょうから、「その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項」として秘匿することには、特に問題がないように思います。

起訴状に被害者の氏名・住所等を記載しないこと↓とは、全く次元の異なる問題で、公正な裁判の実現に、特段、支障があるとは思えません。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/369594449.html

強いて言えば、どこの誰が、どこの誰に、というのを分かっているのは訴訟関係者だけで、それらが公にされないまま、裁判が行われるのはいかがなものか、ということなんでしょうが、そういうことよりも、一定の犯罪の被害に遭ったことが公にならないようにすることにより、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るために、刑事訴訟法が改正された訳ですから。

札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
posted by 森越 壮史郎 at 12:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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