お盆休みのため、ブログで取り扱おうと思うニュースがありませんでした。
裁判所のホームページに、「差押債権をいわゆる預金額最大店舗指定方式により表示する個人債務者の預金債権の差押えにつき、差押債権の特定方法として、当該個人債務者の氏名の読み仮名、住所及び生年月日を付記したときは、差押債権の特定に欠けるところはない」とした名古屋高等裁判所平成24年9月20日決定が掲載されています↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82686&hanreiKbn=04
高裁レベルでは、全店舗順位付け方式による預金の差押を認める決定もあったのですが、ちょうど1年前の最高裁判所平成23年9月20日決定は、「民事執行規則133条2項の求める差押債権の特定とは、債権差押命令の送達を受けた第三債務者において、直ちにとはいえないまでも、差押えの効力が上記送達の時点で生ずることにそぐわない事態とならない程度に速やかに、かつ、確実に、差し押さえられた債権を識別することができるものでなければならないと解するのが相当」であるとし、「本件申立ては、大規模な金融機関である第三債務者らの全ての店舗を対象として順位付けをし、先順位の店舗の預貯金債権の額が差押債権額に満たないときは、順次予備的に後順位の店舗の預貯金債権を差押債権とする旨の差押えを求めるものであり、各第三債務者において、先順位の店舗の預貯金債権の全てについて、その存否及び先行の差押え又は仮差押えの有無、定期預金、普通預金等の種別、差押命令送達時点での残高等を調査して、差押えの効力が生ずる預貯金債権の総額を把握する作業が完了しない限り、後順位の店舗の預貯金債権に差押えの効力が生ずるか否かが判明しないのであるから、本件申立てにおける差押債権の表示は、送達を受けた第三債務者において上記の程度に速やかに確実に差し押えられた債権を識別することができるものであるということはできない。そうすると、本件申立ては、差押債権の特定を欠き不適法というべきである。」と判示してしまいました↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81634&hanreiKbn=02
これに対し、上記名古屋高裁決定は、上記最高裁決定と同じ土俵に立ちながらも、「預金額最大店舗指定方式は、大規模な金融機関である第三債務者のすべての店舗を対象に含むものではあるが、預金債権額合計の最も大きな店舗(ただし、これが複数あるときは、そのうち支店番号が最も若い店舗)が決まりさえすれば、その後の処理は、支店名個別特定方式と同様になる。」し、「銀行では、顧客を管理するため、CIFシステムを利用していること、同システムによれば、少なくとも個人については、氏名、氏名の読み仮名、生年月日、住所が特定されれば、速やかに顧客の預金口座の存在を把握することができること、これをもとに銀行各店舗の残高照会をして預金額最大店舗を特定するのにはさほどの時間と労力を要しないことが認められる。」ので、「差押債務者である相手方が個人で、氏名の読み仮名、住所、生年月日が特定されている場合においては、預金額最大店舗指定方式は、債権差押命令の送達を受けた第三債務者において、直ちにとはいえないまでも、差押えの効力が上記送達の時点で生じることにそぐわない事態とならない程度に速やかに、かつ、確実に、差し押さえられた債権を識別することができるものと認めるのが相当である。」として、「差押債権の特定に欠けるところはない。」と判示してくれました。
上記最高裁決定の補足意見が、「現時点においてCIFシステムが全店一括順位付け方式による差押えに直ちに対応できる機能を有していることを示す資料は公表されておらず」と述べているのとは、随分、趣きを異にしますが、時代の差、立証の差ということなのでしょうか。
せっかく裁判を起こして、判決が出ても、お金を支払わない人の預貯金が、どこの支店にあるのかなんて、わかる訳がないし、金融機関も教えてくれないので、支店名個別特定方式しか認められないのであれば、判決は、絵に描いた餅、単なる紙切れに過ぎません。
だから、怪しげな情報屋なるものが、暗躍するのです↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/299070047.html
最高裁に上がっているのかどうかはわかりませんが、上がっているのであれば、是非とも、名古屋高裁の判断を維持して欲しいところです。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ