以下は、京都新聞(2013年07月30日)からの引用です。
「ホームページ(HP)制作会社の詐欺的商法で結ばされたクレジット契約は無効だとして、京都市内で美容室を経営する60代の女性が大手信販会社に対し、支払い済み代金54万円の返還を求めるなどした訴訟の判決が30日、京都地裁であった。
橋詰均裁判官は契約を無効とし、全額の返還を命じた。
原告代理人を務めた「リース被害京都弁護団」によると、悪質商法被害について、中小業者は個人に比べて法律の保護が乏しいという。
中小業者による信販会社への既払い代金返還請求が認められるのは極めて異例といい、消費者保護に詳しい京都産業大法務研究科の坂東俊矢教授は「被害救済の幅を広げる画期的な判決」と評価している。
判決によると、女性は2007年10月、HP制作会社の従業員から「HPを作れば必ず客が増える」との再三の勧誘に応じ、後に信販会社「セディナ」(名古屋市)に吸収合併された信販会社と分割払いの契約を結んだ。
橋詰裁判官は、実際の契約内容は販売促進用のCD−ROMの売買だったが、女性が制作会社のしつこい勧誘により「契約したのはHP制作の請負代金だと考えていたのは明らか」と認定した。
契約内容の認識の食い違いについて女性に重大な過失はなく、信販会社の落ち度を認めて契約を無効とした。
セディナ広報部は「判決文をよく読んで対応を決めたい」とコメントした。」
裁判所のホームページには掲載されていませんし、「リース被害京都弁護団」のホームページもないようで、判決全文に触れることはできませんでしたが、「契約内容の認識の食い違いについて重大な過失はなく無効」とのことですので、錯誤無効(民法95条「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」)を認めたということでしょうね。
一般消費者の場合には、消費者契約法・特定商取引法等の消費者保護立法があるのですが、だからこそ、単なる一般消費者ではなく、中小業者を狙った悪徳商法が後を絶たないようです。
「実質的には一般消費者と異なることはない」という理由で、法律の適用を認めた判決もない訳ではありませんが↓、民法であれば、被害者が一般消費者でなくても関係ありませんので、確かに画期的だとは思います。
http://www.kokusen.go.jp/hanrei/data/200902_2.html
ただ、民法の条文なので、我々弁護士は、当然知っていますので、例えば、予備的に、錯誤無効の主張をしたり、されたりることもありますが、裁判所はなかなか認めない、というのが私のイメージです。
ですので、どのような立証により、錯誤無効が認められたのか、興味がありますね。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ