以下は、毎日jp(2013年07月30日)からの引用です。
「なぜ不十分な捜査が繰り返されるのか。
大阪府警に誤認逮捕された男性会社員(42)の起訴が取り消された。
昨年の遠隔操作ウイルス事件を教訓に、容疑者の言い分には真摯(しんし)に耳を傾けると誓ったはずだった。
「捜査機関の信頼性が問われている」。
大阪地検と府警は危機感を募らせている。
「典型的な見込み捜査だった」。
起訴取り消しを聞いた府警幹部は肩を落とした。
捜査関係者によると、今回の窃盗事件を捜査したのは北堺署の「直轄警察隊」。
署長直属で街頭犯罪を担当する捜査班だ。
刑事課長代理(警部)をトップに計8人が捜査し、男性を誤認逮捕してしまった。
経験が浅い若手が多かったという。
一方、有罪を信じて男性を起訴したのは地検堺支部の副検事だった。
ただ、いずれも上司に捜査結果を報告して決裁を受けている。
府警のベテラン捜査員は「上司がなぜ気付かなかったのか」と首をかしげた。
検察には府警の捜査過程をチェックする役割もある。
起訴取り消しを発表した地検の上野友慈(ゆうじ)次席検事は「検事は府警の捜査を信用してしまった。(誤りがあるかもしれないという)思いが至らなかった」と述べた。
検察幹部も「決裁時に見抜けなかった理由を検証する必要がある」と強調した。
大阪では昨年、遠隔操作ウイルスに感染したパソコンで犯行予告が書き込まれた事件で、府警がアニメ演出家の男性を誤認逮捕した。
地検も起訴し、その後、起訴を取り消した。
府警は昨年12月、検証結果を公表し、「容疑者が否認した場合、供述内容をよく聴き、第三者関与の検討を徹底する」と約束した。
別人が犯人であることを理由に起訴が取り消されるのは異例だが、ずさんな捜査は繰り返された。
府警幹部は「全警察官が捜査に臨む姿勢を根本的に改めなければならない」と声を荒らげた。
府警の大村喜一(よしかず)・刑事総務課長は29日、「男性や家族にご迷惑とご心労をかけたことに深謝申し上げる」とのコメントを出した。
北堺署の小坂義之署長は男性に直接謝罪する意向で、府警は捜査の検証結果を公表する方針。
◇記録時刻の確認怠る
アリバイ捜査と防犯カメラなどの記録時刻の確認。
基本的なことさえ調べていれば誤認逮捕や起訴には至らなかった可能性が高い。
男性は1月13日朝、堺市西区のセルフ式ガソリンスタンド(GS)で、盗難カードを使ってガソリン約25リットル(約3500円)を給油したとして起訴された。
GSの販売記録によると、犯行時刻は午前5時39分だった。
「給油後、高速に乗った」。弁護人の赤堀順一郎弁護士は男性の妻からこう聞いて調査を始めた。
自動料金収受システム(ETC)の記録を入手し、男性が犯行時刻の1分後の午前5時40分、阪神高速堺入口を通過したことを突き止めた。
GSから堺入口まで約6.4キロ。
1分間で移動するには時速360キロで車を飛ばした計算だ。
ETC記録はアリバイを示す重要な証拠だったが、北堺署は確認していなかった。
一方、北堺署が男性を逮捕する証拠に挙げたのが(1)GSの防犯カメラ映像(2)車のナンバーを自動的に読み取るGSの来店履歴システム−−など。
(1)は男性が給油する姿を映し(2)は男性の車の来店を記録していた。
その時刻は(1)午前5時42分(2)午前5時41分だった。
北堺署は犯行時刻とつじつまを合わせるため、「防犯カメラなどの記録時刻が2〜3分進んでいる」としたが、正確に確認しなかった。
赤堀弁護士によると、男性はこのGSの常連で常に現金払いだった。
犯行時刻直前の午前5時34分に現金払いで給油された記録があり、これが男性の給油時間とみられる。
つまり、防犯カメラの時刻は約8分進んでいたことになる。
GS周辺には通行車両のナンバーを記録する「Nシステム」もあるが、北堺署は男性の車の走行ルートや時刻をよく調べずに、逮捕に踏み切っていた。」
このように、たった数分の違いでも、アリバイが成立したり、しなかったりする訳ですから、できる限り具体的に特定する必要がある訳です↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/369594449.html
それはさて置き、警察も勿論問題ですが、むしろ検察の問題の方が大きいのではないでしょうか。
当然、検察官も取り調べをする訳ですし、決裁制度もある訳ですから。
と思ったら、以下は、YOMIURI ONLINE(2013年8月2日)からの引用です。
時効見落とし起訴、53日不当勾留…東京区検
東京地検は2日、東京区検の男性副検事(48)が建造物侵入罪の公訴時効の成立(3年)を見落とし、6月7日に千葉県の無職男性(59)を同罪で誤って起訴していたと発表した。
男性は釈放される7月29日まで53日間不当に勾留されており、区検は男性に謝罪した。
男性は別の窃盗事件で公判中で、区検は時効成立分について免訴の判決を求める。
発表などによると、男性は2010年5月に東京都渋谷区内のビルに窃盗目的で侵入した疑いで、今年5月、警視庁に建造物侵入と窃盗未遂の容疑で逮捕された。
副検事は建造物侵入罪のみで東京簡裁に起訴したが、時効が5月中旬に成立していたことを見落としていた。
起訴は区検刑事部長らが決裁したが、誤りに気づかなかったという。
区検は7月26日に窃盗罪などで追起訴したが、公判担当者が誤りに気づき、29日に勾留を取り消して釈放した。
建造物侵入事件は同月に初公判が開かれたが、弁護人や裁判官から誤りの指摘はなかったという。
記者会見した堺徹・東京地検次席検事は「猛省し、より厳密な確認作業をして再発防止に努めたい」と述べた。」
逮捕された今年5月の段階では、公訴時効は成立していなかったのでしょうか。
逮捕された段階で既に公訴時効が成立していたとすれば、逮捕状を発した裁判官にも、問題ありということになりますが。
それにしても、弁護人になったら、公訴時効が成立していないか確認しなければならないなんて…。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ