以下は、YOMIURI ONLINE(2013年7月24日)からの引用です。
「富山市で2010年、会社役員夫婦が殺害された事件で、殺人容疑などで逮捕された後、処分保留となっていた元富山県警警部補の加野猛被告(54)(地方公務員法違反で公判中)について、富山地検は24日、殺人罪などを不起訴(嫌疑不十分)とした。
加野被告は捜査段階で容疑を認めたが、証拠の矛盾が見つかるなどしたため、地検と県警は補充捜査を続けてきた。
しかし矛盾は残ったままで、起訴をしない判断をした。
捜査は根本的なやり直しを迫られる。
加野被告は10年4月20日、富山市大泉のマンションで、知人で住人の福田三郎さん(当時79歳)と妻信子さん(当時75歳)の首をロープで絞めて殺し、火を付けたとして殺人、放火、死体損壊の疑いが持たれていた。
昨年11月、知人に暴力団員の逮捕情報を漏らしたとして、地方公務員法違反容疑で逮捕され、同年12月、福田さん夫婦殺害の容疑などで再逮捕された。
加野被告は「やったことは間違いない」と殺害を認めていた。
しかし、事件後に週刊文春に届いたCD―Rに入っていた「犯行声明文」を巡り、県警は当初、加野被告が作成した証拠とみていたが、記録が残っていた更新時間帯は高岡署留置管理課で勤務していてアリバイがあり、加野被告が供述した時期と約1か月もずれていた。
文書ソフトのバージョンも、加野被告が使用したと説明したノートパソコンの設定と異なるなど、矛盾点が見つかっていた。
地検は鑑定留置を経て、勾留満期となった5月22日、処分保留にし、県警と捜査を進めたが、証拠の矛盾などを解消できなかった。
地方公務員法違反事件(求刑・懲役1年)の判決は今月25日午前に予定されている。
争いはなく、執行猶予などで釈放される公算が大きく、地検はぎりぎりの判断を迫られていた。」
やはり、責任能力の問題ではありませんでしたね↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/364320004.html
本人がやったと言っているのに、なぜ不起訴なのかと思うかも知れませんが、憲法38条3項は、「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。」と定めており、これを受けた刑事訴訟法319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と定めていますので、自白だけでは有罪にはできないのです。
自白獲得のために無茶な取り調べが横行することを防ぐ必要がありますし、自暴自棄になったり、あるいは真犯人を庇うために、本当はやっていない人を、自白のみで処罰するのも、防ぐ必要があるからです。
秘密の暴露どころか、矛盾だらけでは、不起訴処分も致し方ありません。
CD−Rがすぐに任意提出されていれば、違った展開となったでしょうか。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ