以下は、時事ドットコム(2013/07/23)からの引用です。
「群馬県藤岡市の関越自動車道で7人が死亡した高速ツアーバス事故で、自動車運転過失致死傷罪などに問われた運転手河野化山被告(45)の裁判が23日、前橋地裁で始まった。
検察側は河野被告が眠気を感じながら休息を取らず、運転を続けたと主張。
一方弁護側は、眠気を感じないまま睡眠に陥ったとして争う姿勢を見せた。
被告は睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されており、睡眠に陥る前兆があったかどうかが争点になる。
河野被告は公判前整理手続き中、SASと診断された。
SAS患者が眠気を覚えないまま急に眠りに落ちる場合があるかどうかは、専門家の間で意見が分かれる。
裁判所の判断も分かれている。
2002年に和歌山県古座町(現・串本町)で3人が重軽傷を負った事故で大阪地裁は05年、業務上過失致傷罪に問われた男性運転手をSASと認め、「予兆なく睡眠に陥った可能性を否定できない」として無罪を言い渡した。
検察側は控訴せず確定した。
一方、愛知県豊橋市で08年に起きた死亡事故では、名古屋高裁が09年、危険運転致死罪に問われた運転手について「捜査段階で事故に至るまでの経緯を間断なく説明しており、睡眠に陥っていなかった」と判断。
SASを理由に無罪を言い渡した一審判決を破棄し、懲役5年が確定した。
交通事故の裁判に詳しい高山俊吉弁護士は「症例が世の中に知られてから間がなく、司法の判断が安定していない」と指摘。
「新しい病気を原因とした事故である可能性に、どこまで迫っていくかがポイント」と話している。」
無罪とした大阪地裁平成17年02月09日判決は↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=6582&hanreiKbn=04
有罪とした大津地裁平成19年01月26日判決は↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=34956&hanreiKbn=04
逆転有罪とした名古屋高裁平成21年7月27日判決や、その原審の無罪判決は、裁判所のホームページには掲載されていませんでしたが、記事はありました。
という訳で、以下は、47NEWS(2009/07/27)からの引用です。
一審無罪の被告に逆転有罪 愛知の交通死亡事故で名古屋高裁
愛知県豊橋市で昨年3月、トレーラー運転中に赤信号を故意に無視して自転車と衝突し、男性を死亡させたとして危険運転致死罪に問われた会社員荒浪裕之被告(45)の控訴審判決で、名古屋高裁は27日、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を理由に無罪(求刑懲役8年)とした一審判決を破棄、懲役5年を言い渡した。
護側は上告する方針。
片山俊雄裁判長は判決理由で、赤信号を故意に無視したとする捜査段階の被告の供述は信用できると指摘、「事故までの経緯を間断なく説明しており、被告が睡眠に陥ったことがなかったことを示している」と述べた。
昨年11月の一審名古屋地裁豊橋支部判決は、赤信号を認識しながら、そのまま減速も加速もせず、交差点に進入したとする被告の供述は不自然とし、「赤信号を認めた直後に、瞬時の眠りに落ちた可能性は否定できない」とSASの影響を理由に無罪とした。
判決によると、荒浪被告は昨年3月5日、トレーラー運転中に豊橋市下地町の交差点で赤信号を故意に無視して進入、横断歩道を渡っていた自転車の男性=当時(46)=をはねて死亡させた。
非常に微妙な判断ですが、捜査段階の被告人の供述の信用性が、判断の分かれ目になっていますね。
ということは、捜査段階から弁護人が就いて、検察側に都合の良い供述調書を取られなければ、過失の立証が難しい事件もあるということになります。
実際、睡眠時無呼吸症候群の事案ではありませんが、複数の死傷者が出た過失致死傷事件の起訴前弁護を行い、起訴猶予処分だったかで済んだことがあります。
弁護士という立場を離れた1人の個人としては、本当にそれで良かったのかという気がしないではなかったですが。
勿論、民事では、充分な被害弁償をさせて頂いたつもりです。
本件では、7人もの方が死亡しており、有罪であれば当然実刑、しかも相当長期間の刑期となりますので、弁護人の立場としては、争うのは当然のことだと思います。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
ただ、事故の原因が誰にもわからないのに、「複数の死傷者が出ている以上、誰かに刑事責任を負わせなければ、座りが悪い」という発想から、「何かしらのミスがあったからこそ事故が起こったに決まっているんだから、責任者としての落ち度を認めなさい。」ということで、刑務所行きになったり、前科者になったりして、一生を棒に振る人が出るのは、やはり、あってはならないことだと思います。
それぞれの立場で、全力を尽くすしかないと思います。