以下は、MSN産経ニュース(2013.7.14)からの引用です。
「強制わいせつ事件の起訴状で、東京地検が被害児童の氏名を加害者に知られないよう氏名を伏せたところ、東京地裁が記載を命じていたことが13日、関係者への取材で分かった。
地検と地裁は対応を協議しているが、起訴状の不備を理由に公訴棄却が言い渡され、裁判が打ち切りとなる可能性もある。
刑事訴訟法は起訴状に日時、場所、方法を明記したうえで、罪となるべき事実を特定するように求めている。
被害者の氏名に関する規定はないが、通常は記載されている。
関係者によると、問題になったのは、児童が面識のない男に公園のトイレでわいせつな行為を受けたとされる事件。
起訴状の謄本が被告に送達されることから、2次被害を恐れた両親の要望を受け、地検は起訴状で児童の氏名を伏せて、年齢のみを記載した。
これに対して、地裁は起訴内容の特定に支障が出ることなどを理由として、児童の氏名を記載するよう命じた。
被告の男の弁護人は氏名を伏せることに同意しており、地検は被害者が特定可能な別の記載がないか地裁と協議を続けている。
検察当局では、昨年11月に神奈川県逗子市で起きたストーカー殺人事件で、警察官が逮捕状に書かれた女性の住所を朗読したことが犯行につながった事態を受け、一部事件で起訴状での被害者名の匿名化を進めている。
被害者名の代わりにメールアドレスを記載したり、勤務先と姓だけを書いたりするといった配慮を行っているという。
一方、匿名では誰に対する犯罪行為で起訴されたか、被告側に判然としなくなる可能性がある。
刑事事件に詳しい弁護士は「匿名が一般化すれば、被告の反論する権利が侵害される恐れがあり、ひいては冤罪(えんざい)につながる危険性をはらむ」と指摘している。
「犯罪内容の具体性ポイント」
□元最高検検事で筑波大名誉教授の土本武司氏の話
「起訴状にどれだけ具体的に犯罪内容が書かれているかが、被害者の匿名化を分けるポイントだ。裁判所は今回、被告の責任を追及するだけの内容の具体性が、事実を特定するものとして不十分だと判断したとみられる。人違いを避けるなど、被告側は反論する防御権がある。被害者の保護も重要な観点だが、刑事訴訟法には真相究明が目的の一つに掲げられている。一律に匿名化するのではなく、名前を出すことのデメリットも考慮しながら、判断すべきだと考える」」
ようやく、起訴状が被告人本人の手にわたるということが、理解されるようになりましたね↓http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/301227649.html
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/366628931.html
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/366830002.html
被害者が誰なのかということは、当然、罪となるべき事実の一部ですので、被害者特定事項に関する規定がないのは、むしろ、当然に記載すべき事柄だからではないでしょうか。
刑事訴訟法256条3項が、更に、「公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。」と定めているのは、被告人の防御の対象を明らかにするために、できる限り具体的に特定しなさいということです。
例えば、犯行時間が数時間違うだけでも、アリバイが成立したり、しなかったりすることは、テレビドラマでも良くある話です。
被告人の弁護人が氏名を伏せることに同意しているのだから、別に問題ないのではないかという考え方もあるでしょうが、この裁判官の考え方としては、根源的な問題なので、当事者が同意さえすれば問題なしという訳には行かない、ということなのだと思います。
それにしても、民事事件は原告・被告、刑事事件は被告人なのですが、改まりそうもありませんね。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ