以下は、毎日jp(2013年06月23日)からの引用です。
「◇救済対象、知らない人も多く
集団予防接種の注射器使い回しを放置した国の責任が問われた「B型肝炎訴訟」は、国と感染被害者との間で和解基本合意が成立してから間もなく2年。
国は和解の対象者を45万人と試算するが、これまでの提訴者数は全国で約9000人、道内で約1200人にとどまっている。
北海道弁護団は「時間がたつと提訴に必要な条件が欠けて、救済を受けられない被害者も出てくる」として、被害者の掘り起こしに力を入れている。
■身近に被害者
「おれもキャリアー(未発症の持続感染者)なんだ」。
昨年秋、札幌市北区の大野隆さん(65)は学生時代からの友人で、今も同じバンドを組む札幌市西区の山崎徳三さん(65)に、B型肝炎訴訟の原告になったことを告げると、こう打ち明けられた。
訴訟に加わるよう勧め、資料をそろえ、山崎さんも提訴した。
大野さんは「被害者数を考えると、身近にもっといてもおかしくない。救済の対象になることを知らない被害者も多いのではないか」と話す。
B型肝炎訴訟は、子供の頃に受けた集団予防接種で注射針や筒の使い回しで広がった「国内最大規模の医療訴訟」と言われる。
11年6月、原告と国が和解基本合意に調印し、被害者が提訴すると、国が予防接種で感染したかどうかを審査して、確認されれば裁判所で個別和解する仕組みができた。
基本合意にあたって国は、被害者数を約45万人と試算し、和解総額は今後5年間で1兆円を超えると推計した。
だが6月20日現在の死亡した患者の家族を含む提訴者は、全国で8891人、道内では1248人。
救済対象の45万人を日本の人口に当てはめると、人口約550万人の道内では少なくとも1万5000人が対象になるはずだ。
このため、弁護団は昨年10月から江差町や遠軽町など道内7カ所で出張説明会を開催。
これまでに約70人から相談を受け、提訴につながった人もいる。
弁護団事務局長の奥泉尚洋弁護士は「基本合意の成立直後は和解が進まなかったが、今年に入ってペースは速くなった。一人でも多く救済されるよう、被害者の掘り起こしが今後の課題だ」と話す。
■早期提訴を
厚生労働省の推計では、救済対象のうちウイルス感染していても症状が出ないキャリアーが約40万人を占めるが、キャリアーは全提訴者の2割に過ぎない。
現在は症状がないキャリアーでも15%程度が将来、慢性肝炎を発症するといわれており、原告・弁護団は早期に提訴するよう勧めている。
救済を受けるため裁判所に提訴するには、B型肝炎ウイルスの感染原因に多い「母子感染」でないことを証明するため、母親が80歳未満で受けた血液検査の結果が必要だ。
また、集団予防接種以外の感染原因がないことを証明するため、過去にかかった医療機関のカルテも求められる。
発症を待ってから提訴すると、時間が経過して資料をそろえられない可能性もある。
和解基本合意では、キャリアーには慢性肝炎を発症していないかどうかを確認するための定期検査費用も支給される。
弁護団の高木淳平弁護士は「提訴を自分の健康を守るきっかけにしてほしい」と話している。
■肝炎対策を要望
訴訟の要件を満たし、予防接種の証明ができる患者は一部だ。
提訴できるのは、国の責任が認められた1941年7月2日から、1988年1月27日に生まれた人に限る。
この間に生まれていても、検査結果などの資料がそろわず提訴できない人もいる。
提訴者数が伸びないのは、条件を満たさない被害者が一定数いることも背景にある。
また、発症から20年以上が経過すると損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」の適用を受け、慢性肝炎の患者は和解額は大幅に減額されるなど、訴訟では等しく救済されないのも実情だ。
感染拡大の経緯を検証してきた厚労省の検討会は18日、国が危険性を十分に把握せず、対応の遅れが原因との検証結果をまとめた。
予防接種以外の感染原因を含めたB型肝炎ウイルスの感染者数は130万人以上と言われており、感染原因にかかわらず、ウイルスの拡大防止と肝炎対策に引き続き取り組む必要性も指摘された。
全国弁護団長の佐藤哲之弁護士は「肝炎患者が治療に専念できる支援が実現して初めて訴訟が終息したと言える。引き続き国に施策の充実を求めていきたい」と話している。
B型肝炎訴訟の相談は、北海道弁護団(011・231・1941)か、厚労省の専用窓口(03・3595・2252)。
■ことば
◇B型肝炎
血液を介して感染するウイルス性肝炎で、免疫機能が未熟な乳幼児期にウイルスを体内に取り込むと異物と認識せず、持続的にウイルスを保有する「キャリアー」となる。
発症の有無や時期には個人差があるが、発症すると肝硬変や肝がんに進行する。
ウイルスを体内から完全に排除する治療法はなく、抗ウイルス薬を投与してウイルスの増殖を抑え、悪化させないようにする。
予防接種の他に母子感染や輸血、性行為でうつることはあるが、日常生活で感染は広がらない。
◇B型肝炎訴訟の道内での和解状況
症状 給付額 提訴 和解
死亡、肝がん、肝硬変(重度) 3600万円 314人 155人
肝硬変(軽度) 2500万円 96人 56人
慢性肝炎 1250万円 526人 225人
未発症 50万円 263人 106人
*提訴と和解は患者数。
北海道弁護団まとめ(6月20日現在)」
「母親が80歳未満で受けた血液検査の結果が必要だ。」と書かれていますが、母親の血液検査の結果がなくても、年長の兄姉の血液検査でも、要件を満たす可能性があります。
母子手帳がなくても、要件を満たす可能性があります。
ただ、20年の除斥期間という大きな問題があります。
しかも、例えば、母親の血液検査結果も、年長兄姉の血液検査も入手できなければ、万事休すになるなど、年月が経てば経つほど、本当は要件を満たしているのに、その立証ができないという、取り返しのつかない事態になる可能性があります。
B型肝炎訴訟に関するお問い合わせは、下記事務局までお願い致します。
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全国B型肝炎訴訟北海道弁護団事務局
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札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ