以下は、河北新報(2013年06月05日)からの引用です。
「添乗員付きの欧州ツアー旅行で英国のヒースロー空港に置き去りにされ、精神的苦痛を受けたとして、仙台市若林区の50代男性が4日までに、ツアーを計画した大手旅行会社阪急交通社(大阪市)に慰謝料など計40万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。
男性の代理人によると、同様の訴訟は珍しい。
男性は「会社は責任を認め、過失のない旅行客の立場に配慮した対応をしてほしい」と強調する。
訴えによると、ツアーには男性ら26人が参加。
ことし1月、スペインやポルトガルを訪れ、ヒースロー空港で帰国手続きを取った。
テロ警戒で手荷物検査が厳しく、男性と女性添乗員、女性客の計3人が無作為で選ばれ、再検査を受けた。
添乗員と女性客は先に再検査を終え、搭乗ゲートに移動。
添乗員は男性が遅れる旨をゲートの係員に知らせた後、係員の指示で成田空港行きの航空機に移った。
男性も再検査を済ませてゲートに駆け付けたが、出発に間に合わなかった。
添乗員は携帯電話で男性に「飛び立つので(男性は)もう乗れない。頑張って帰ってきてください」と伝えたという。
男性は現地の旅行代理店を通じてホテルを予約。
英語があまり話せないため道案内などのガイドを依頼し、ホテルに1泊し、別の航空機で帰国した。
宿泊費やガイド代は自分で負担したという。
被害の弁償などをめぐり、男性は旅行会社側と何度かやりとりしたが、帰国後、会社側から「会社に過失はなく、金銭の補償はしない」といった連絡があったという。
男性側は「安全に旅行できると思って添乗員付きのツアーを選んだ。添乗員は空港に残って男性の安全確保に力を尽くすべきだった」と主張。
阪急交通社の担当者は「裁判になったことは誠に残念。法廷で見解を述べる」と話している。」
Yahooニュースの受け売りですが、国民生活センターの消費者問題の判例集の中に、類似する事案の判例が掲載されています↓
http://www.kokusen.go.jp/hanrei/data/201111_1.html
しかし、類似する事案とは言っても、上記の判例の事案は、バスでの点呼に関する勘違い、本件事案は、航空機でのチェックイン後の置いてきぼりですので、必ずしも同列に論じることはできません。
チェックイン後の置いてきぼりというのは、私自身は初耳ですが、海外では、良くあることなのでしょうか。
一度、乗り込んだ航空機から、勝手に、降りることはできるのでしょうか。
ですので、添乗員に、男性が遅れる旨をゲートの係員に知らせるだけでなく、空港に残ってまで、男性の安全確保に力を尽くすべき義務があるのかどうか、そもそもそれが可能だったのかどうかは、何とも言えません。
しかし、切り口を変えると、再検査を受ける際に、男性はツアー客で、自分は添乗員で責任のある立場なので、男性を先に再検査するよう、交渉することはできなかったのでしょうか。
交渉したけど駄目だったということであれば、空港に残る義務一本で行くしかないのでしょうが。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ