2013年06月11日

東電賠償、1万人超が未請求 来秋以降、時効の恐れ


朝日新聞デジタル(2013年06月06日)からの引用です。

「福島第一原発事故で避難を指示された約16万人のうち、1万人以上が東京電力に損害賠償を請求しておらず、来年以降に時効が成立して請求権を失う恐れのあることが分かった。

損害賠償請求権の時効は3年。東電は2011年9月から精神的損害など内容ごとに受け付けを始め、開始時から3年を数えると説明している。

早い人は14年9月に時効となる計算だ。

東電が福島県出身の荒井広幸・新党改革幹事長に示した資料によると、東電から事故直後に1世帯100万円などを仮払いされた16万5824人中、5月末時点で1万1214人が正式に請求していない。

住民や自治体からは「書類が複雑で請求方法が分からない」「仮払いで終わりと勘違いした」との声が出ている。

請求していても合意できないまま放置する人を含めると、時効対象者はさらに膨らむ可能性がある。

国会では先月、原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)に申し立てれば時効は中断し、決裂しても1カ月は提訴を認める特例法が成立した。

だが未請求者の多くはADRへの申し立てもしておらず、救済されない恐れが強い。

衆参の委員会は「法的措置の検討を含む必要な措置」を求める付帯決議をしたが、法改正の動きは見えない。

東電は「時効が完成してもただちに援用することは考えていない」としているが、荒井氏は「東電は積極的に請求を呼びかけておらず、賠償額を抑えたいのではないか。行政が未請求者の意思を直接確認する必要がある」と話す。




やはり、最低限、3年間の短期消滅時効の適用は、排除すべきではないでしょうか↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/365174070.html

それにしても、なぜ、消滅時効期間の始期が、受け付けを始めた2011年9月になるのでしょうか。

同法161条は、「時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため時効を中断することができないときは、その障害が消滅した時から2週間を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」と定めているだけで、始期については、このような特段の定めがありません。

弁済は、債務承認(同法147条3号)という時効中断事由にあたりますので、仮払いをした時点で、一旦、時効は中断していることになるとは思いますが、厳密に考えれば、各世帯への仮払い、すなわち世帯主への弁済なので、世帯主以外の方々に、時効中断の効果が及ぶのかは、微妙です。

東電は、以前は、明確に、「消滅時効は主張しない」とコメントしていた筈なのに↓、今回は、「時効が完成してもただちに援用することは考えていない」と、微妙な言い回しに変わって来ましたね。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/322309153.html

万が一、東電が消滅時効を援用したとしたら、被害者側としては、権利の濫用(同法1条)であると主張することになるのでしょうが、同法146条は、明文で、「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。」と定めていますので、これを盾にとって争われると、厄介だと思います。

最高裁まで争って白黒つけるなどという事態にならないように、きちんと立法的に解決すべきなのですが、法改正の動きが見えないのであれば、自賠責のように、東電に、時効中断承認書を、発行させてはいかがでしょうか。

札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
posted by 森越 壮史郎 at 12:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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