以下は、中国新聞(2013/06/02)からの引用です。
「交通事故などに遭った際、法律相談や訴訟の弁護士費用を保険会社が負担する「弁護士保険」で、受任した弁護士が高額な報酬を算出して保険会社に支払いを求めてトラブルになった例が少なくとも9件あることが1日、複数の損害保険会社などへの取材で分かった。
専門家は「報酬の過大請求は弁護士会の懲戒処分の対象になる」と指摘。
保険の販売中止を検討している損保もある。
弁護士保険は2000年、訴訟費用の軽減などを目的に、日弁連と損保各社などが協力して誕生し、個人向けの自動車保険や傷害保険などの特約として販売。
加入者やその家族が損害賠償請求をする際、弁護士費用や鑑定の経費などが保険金で支払われる。
弁護士保険に加入していた香川県の男性は09年冬に交通事故に遭い、弁護士に示談交渉を依頼。
報酬は請求段階の賠償額を基準に算出するとし、委任契約を結んだ。
弁護士はその後、請求する賠償額を約1200万円と決定。
示談交渉は約400万円の受け取りで決着したが、弁護士は請求段階の金額を基準に報酬を約200万円と算出し、保険会社に支払いを求めた。
損保は、報酬が賠償額の約50%にも上ることを問題視。
請求段階ではなく、依頼者が実際に受け取った金額を基に決めるべきだと主張。
弁護士は「依頼者との契約に基づいている。請求を拒むのは法的根拠を欠いている」と反論した。
男性は「報酬が高額になっていることは、保険会社の連絡で初めて知った」と話している。」
日弁連のリーガル・アクセス・センター↓が定めた「弁護士保険における弁護士費用の保険金支払基準」というのがありますので、当然、この基準に基づき請求するものだと思っていました。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/resolution/lac.html
勿論、上記支払基準では、報酬は、「依頼者が得られることとなった経済的利益の額」、すなわち、依頼者が実際に受け取った金額を基準としています。
加入者は年々増加しているものの、利用者は僅か0.05%ということには驚きましたが↓、不幸にして、交通事故の被害者となったご本人にとっては勿論、我々弁護士にとっても、ありがたい制度です。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/273681527.html
ということは、弁護士に報酬を支払うだけでなく、被害者に損害を賠償しなければならない立場にもある損害保険会社にとっては、ありがたくない制度ということになりますので、何かにつけて、制度を廃止しようとする圧力がかかることになるのは、容易に想像できます。
せっかく根付いてきたところなのに、ごく一部の弁護士のトラブルによって、販売中止などということにならないように、訳のわからないことはしないで欲しいものですし、日弁連も、対策を考える必要があると思います。
とは言っても、「報酬が賠償額の約50%にも上ることを問題視」というのは、必ずしも、的を射ていないと思います。
人身事故であっても、後遺障害もなく、損害額が比較的低額な場合もありますし、物損事故も、同様です。
このような、昔であれば、「費用倒れになるから」ということで、泣き寝入りするしかなかったような被害者の方々の救済という意味合いもありますので、場合によっては、報酬が賠償額を上回るというケースすら、あり得る話です。
そこは堅持しなければならないと思います。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
突然のメールにて失礼をいたします。
いつも先生のコラムを拝見させていただいている現役損保社員です。
この先生のコラムは実に的を射ていると感じました。
弁護士特約は大変良い保険と思っております。
毎日遅くまで残っている弁護士特約の担当者に聞きますと、仕事の多くは弁護士さんとの交渉だと言っております。
特にあの有名な●デー・・とか●●・・・とかの先生方は、いつも強烈な請求を上げてくるとのことです。
アメリカでも一時大人気となった弁護士保険も同じように日本でも販売中止となってしまうことに杞憂しております。
末筆ではございますが、先生の益々のご活躍をお祈りいたします。