以下は、日経Web刊(2013/5/23)からの引用です。
「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する。弁護士法は第1条で、弁護士の使命をこううたっている。
この使命を全うするため、登録や懲戒などの面で弁護士の自治が認められているのである。
ところがその崇高なはずの使命に泥を塗るような不祥事が全国で相次いでいる。
目立っているのは、認知症などで判断力が衰えた人の後見人となったことを利用して、財産を着服するといった悪質な例だ。
弁護士会の要職を務めた元幹部による犯行も続いている。
異例の事態というほかない。
個々の弁護士が自らの責務の重さを改めて肝に銘じるとともに、各地の弁護士会が自治の名に恥じない自浄作用を発揮し、不祥事の根絶を期すよう求めたい。
昨年10月には九州弁護士会連合会の元理事長が、今月には東京弁護士会の元副会長が、管理していた依頼者の資産をだまし取ったなどとして逮捕、起訴された。
岡山弁護士会では、元弁護士が依頼者から預かった資金など総額約9億円を横領したとされる。
こうした事件では、着服などが発覚するまで長い時間がかかっている。
苦情が相次いでいたのに弁護士会による適切な対応がとられなかったため、いたずらに被害が拡大してしまったともいえる。
自由と独立を尊重し、個々の弁護士活動に干渉しない「不介入の原則」が、相互監視のまったく期待できない、身内に甘い組織の言い訳になってはならない。
日弁連は依頼者から預かった資金の管理を厳格にするための規定作りを進めている。
不正が疑われる場合には弁護士会に調査権限を与え、対象となった弁護士には帳簿や通帳の写しを添えて回答するよう義務付けるという。
当然の対策といえるが、実効性には疑問も残る。
事後的な調査にとどまらず、未然防止や被害拡大を防ぐ取り組みが欠かせない。
依頼者らが寄せる苦情や相談の中からトラブルの芽を発見し、早い段階で弁護士会が指導、監督に乗り出す体制が必要であろう。」
戦前は、司法大臣が弁護士に対する監督権を有していたのですが、その結果として、時の為政者に逆らおうとする志のある多くの弁護士が、政治犯・思想犯としてが投獄されるなどした歴史に対する反省から、1949年に制定・施行された弁護士法によって、弁護士自治が認められたのだそうです。
今日でも、我々弁護士は、眼の上のたんこぶのようなものでしょうから↓、程度の差こそあれ、似たような恐れは常にあると思います。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/331988821.html
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/343288001.html
個人的には、弁護士自治だから不祥事がはびこり、弁護士自治でなくなれば不祥事が防げるという関係にはないように思いますが、そのような政治的圧力や世論操作に利用されないようにするためにも、信頼を回復するための努力や、実効性のある体制づくりが必要だと思います。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ