2013年05月15日

年金担保融資:5000人超が生活保護に 廃止先送りで


以下は、毎日jp(2013年05月09日)からの引用です。

「高齢の年金受給者が生活破綻に陥る原因として2010年4月に廃止方針が出た「年金担保融資」(年担)に関し、当面継続されているため同月からの1年間で、ほぼ例年並みの5471人の利用者が生活保護を受けるようになったことが分かった。

厚生労働省が取材に回答した。毎日新聞の調べで、11、12年度も同様の傾向が続いていると複数の自治体が回答。

制度廃止を求めていた自治体や支援者の懸念が改めて裏付けられた。

公的年金を担保にした融資は法律で禁じられているが、高齢者が高金利金融に手を出すことを避けるため、独立行政法人「福祉医療機構」の年担のみ例外として認められてきた。

年金から天引きで回収されるため、「近い将来の生活費を食いつぶすもので、生活保護に陥りやすい」と全国知事会や全国市長会が06〜09年に廃止の検討や見直しを要請。

日本弁護士連合会も10年2月に廃止を求め、同年4月に民主党政権下の事業仕分けで廃止とされ、菅政権は同年12月に廃止を閣議決定した。

だが、代替制度拡充など議論は進んでいないのが現状で、新規貸し付けも続行。

厚労省は今年3月、独立行政法人評価委員会の部会で「16年度に廃止時期を判断する」とする一方、具体的工程表などは示さず、事実上論議は先送りされている。

年担返済中に「生活破綻」に至り、生活保護を申請して認められた人数に関し、厚労省は事業仕分け当時、08年度4908人と説明。その後の経過について今回、09年度は6053人、10年度は5471人と集計結果を明かした。

同省と貸し付け側の機構は10年2月以降、利用者が機構に申し込む際に「借入金の使用時期」を申告させる▽返済時に年金からの全額天引きは禁止し、一部は手元に残るようにする−−などの制度変更を行ったが、歯止めが利いていない形だ。

同省は11年度以降の数値は未調査としているが、毎日新聞の取材に対し、生活保護の開始者(一部は受給中の年担借り入れ者)について、札幌市は10年度91人、11年度183人、12年度117人と回答。

横浜市もこの3年間について197人、230人、177人、北九州市も185人、151人、144人と説明した。

厚労省年金局は「廃止に向け制度を見直し、その効果をみている。小口の資金需要はあり、ヤミ金に流れるのを防ぐ役割もある」としている。

【ことば】年金担保融資

国民年金や厚生年金など公的年金の受給権を担保に10万〜250万円を貸し付ける公的融資制度。

独立行政法人・福祉医療機構が運営し、全国の金融機関が窓口となる。

金利年1.6%。返済終了まで年金から天引きされ、破産しても免責されない。

2010年度末の融資残高は約37万件、1830億円。」




独立行政法人福祉医療機構の年金担保貸付制度は↓
http://hp.wam.go.jp/guide/nenkin/tabid/249/Default.aspx

日弁連の意見書は↓
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2010/100218_2.html

1人で複数の借入れをしている方がいるのかも知れませんので、37万件=37万人ではないのかも知れませんが、思ったより利用者は多いのですね。

年金を受給されている方の借金の整理の依頼を受けることも少なくないですが、年金担保貸付制度を利用されている方は極めて稀で、複数の消費者金融業者からの高金利での借入等で、支払不能に陥っている方が殆どだったので、認知度が低く、利用者は少ないのかと思っていました↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/319366918.html

37万件で1830億円ということは、平均借入額は50万円ということになります。

5471人が生活保護を受給するようになったと言っても、仮に37万件=37万人だとすれば、そのうち僅か1.48%程度であり、日本の全人口のうち生活保護を受給している方の割合(同じ2010年で1.56%)よりも、低いことになります。

全員が複数の借入をしているとは思えませんが、仮に利用者の人数が半分と仮定しても、そのうち僅か3%程度に過ぎずませんので、弊害と評価する程のものではないと思います。

むしろ、制度の廃止により、ヤミ金業者の食い物にされたり↓、借入・返済という自助努力で何とか生活を立て直そうとする機会もなく、そのまま生活保護を受給するようになるといった弊害の方が、大きいのではないかと思います。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/319366918.html

ただ、この制度による貸付は、文字どおり、年金が担保となっていますので、自己破産・免責や個人再生と言った法的手続によっても、返済を免れることはできません↓
http://morikoshi-law.com/jikohasanmenseki.html
http://morikoshi-law.com/kojinsaisei.html

他の借入れで目一杯となってから、更に、年金担保貸付を受けてしまうと、受給できる年金の額が減る訳ですから、早晩、破綻することは明らかですし、法的手続によっても、年金担保貸付の返済を免れることはできませんので、年金担保貸付を受ける前に、法的手続をすべきです。

札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
posted by 森越 壮史郎 at 12:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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