以下は、毎日jp(2013年05月02日05月02日)からの引用です。
「熊本県水俣市出身の大阪府豊中市の女性(87歳で死去)が県に水俣病認定を求めた訴訟で、最高裁が原告敗訴とした2審・大阪高裁判決を破棄し、差し戻したことを受け、蒲島郁夫熊本県知事は訴訟継続を断念することを決めた。
県が控訴を取り下げ、女性が勝訴した大阪地裁判決が確定した後、県が認定する。
蒲島知事が2日午後、臨時記者会見を開き方針を表明した。
最高裁は4月16日の判決で、複数症状を要件とする現行の水俣病認定基準について「症状の組み合わせがない場合でも認定できる余地がある」と指摘。
女性を水俣病と認めなかった大阪高裁の判断に対し、更に審理を尽くすよう求め差し戻した。
合わせて審理された水俣市の溝口秋生さんの訴訟については、県側の上告を棄却し、溝口さんの母親(故人)を水俣病と認めた。
このため県は大阪高裁の差し戻し審も、最高裁判決に沿って判断される可能性が高いとして、訴訟継続を断念した。
女性は71年に関西に転居後、78年に認定申請し棄却された。
行政責任を認め国、県に賠償を命じた04年の水俣病関西訴訟の原告でもあり、司法では「水俣病」と認められたが、県は認定しなかったため07年に提訴。
長く入院しており最高裁判決直前の今年3月に亡くなった。
女性の長女(68)は「認定申請してから40年近くかかったけれど、頑張ってきたかいがあった。(母が)最高裁で判決を聞く直前に亡くなってしまったのが心残りですが、(認定されることで)願いが一つだけでもかなうのはうれしい。たくさんの人にお世話になって、ここまでこれたことに感謝しています」と話した。」
続いて、以下は、朝日新聞デジタル(2013年5月7日)からの引用です。
水俣病訴訟、熊本県が控訴取り下げ 女性患者認定
「大阪府豊中市の女性が熊本県に水俣病患者と認定するよう求めた訴訟で、県は7日、大阪高裁への控訴を取り下げた。
女性を患者と認めなかった二審・大阪高裁判決(昨年4月)を破棄し、差し戻した先月の最高裁判決を受けての判断。
女性が勝訴した一審・大阪地裁判決(2010年7月)が確定した。
県は同日、女性を水俣病と認定した。
女性は今年3月に亡くなり、長女(68)が訴訟を引き継いだ。
熊本県の蒲島郁夫知事が2日、今月中旬以降に女性を患者と認定すると明らかにしていた。 」
最高裁判決は↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83193&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83192&hanreiKbn=02
最高裁判決も、控訴取り下げも、英断だとは思いますが、認定申請から40年近く、既に本人も死亡とは、何とも言えない気持ちになりますね。
1審の大阪地裁では原告勝訴、被告の県が控訴し、2審の大阪高裁では逆転敗訴、原告が上告し、最高裁では逆転勝訴ですが、水俣病と認定するための要件を満たしているのか、更に実質的な審理を尽くさせるため、破棄差戻し。
県が控訴を取り下げると、控訴が初めからなかったことになり、原告勝訴の1審の大阪地裁の判決が確定することになり、原告に不利益はありませんので、原告の同意は不要です。
一方、訴えの取下げは、被告としても、せっかく裁判になっているのだから、きちんと白黒つけたいということも当然あるでしょうし、被告の同意を要件としないと、自ら訴え提起しておいて、形勢不利なら訴え取り下げということも可能になってしまいますので、被告の同意が必要となります。
先日、ある事件で、この控訴の取り下げと訴えの取下げとの違いを、高齢の相手方代理人弁護士に説明しなければならない場面がありましたが、違う意味で、何とも言えない気持ちになりました。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ