裁判所のホームページに、「債務整理に係る法律事務を受任した弁護士が、特定の債権者の債権につき消滅時効の完成を待つ方針を採る場合において、上記方針に伴う不利益等や他の選択肢を説明すべき委任契約上の義務を負う」と判示した最高裁判所の平成25年4月16日判決が、掲載されていました↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83191&hanreiKbn=02
「時効待ち」とか「塩漬け」とか言われる手法で、和解ができなければ、残債務を一切支払わずに放置するという手法を採っている弁護士がいるということは、聞いたことがありますし、判決文によると、一部の文献には、債務整理の手法として紹介されているそうですが、私自身としては、一般的な手法だとは思いません↓
http://morikoshi-law.com/niniseiri.html
仮に、今は、生活保護を受給していたり、年金暮らしでこれと言った財産のない方であっても(生活保護費や年金は差押えできません)、将来、働くことができるようになったり、相続その他の事情により、資産を有することになるかも知れませんし、ましてや、働いている方であれば、給料差押のリスクが付いて回りますし、残債務を一切支払わず放置すれば、遅延損害金が大きく膨らむことは自明のことですので。
利息制限法により再計算した残元金のみならず、経過利息や遅延損害金も全額支払えという債権者に対して、残元金に相当する金額を振り込んで、様子を見るということはありますが、飽くまで、残元金に相当する金額は支払っており、残債務全額を時効待ちにする訳ではありませんし、様々な事情により、結果的に、消滅時効期間が経過するということがない訳ではありませんが、極めて例外的なケースです。
という訳で、水俣病の認定に関する判決↓と肩を並べて、わざわざ裁判所のホームページに掲載しなくても良さそうなものですが、判決文の雰囲気からすると、弁護士や司法書士の間で、広く採られている手法なのではないかと、勘違いしているのかも知れません。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83193&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83192&hanreiKbn=02
しかも、日弁連も、早速コメントを掲載していますが↓、いかがなものでしょうか。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/130416_2.html
確かに、法律的には、経過利息や遅延損害金、更には分割の場合には将来利息を支払うのが、当然のことではありますが、それでは、多重債務者の救済にならないので、一括であれ、分割であれ、何とか利息制限法により再計算した残元金のみの支払で済むように、できれば更に減額した金額で済むようにと、個々の弁護士のみならず↓、弁護士会全体としても、頑張ってきたのではないでしょうか。
http://morikoshi-law.com/solution_2.html
和解できなければ全部塩漬けというのは、さすがに行き過ぎだとは思いますが、今回の最高裁判決を前提とすると、弁護士自身のリスク回避のためには、どんどん業者側の言いなりにならざるを得なくなってしまうのではないでしょうか。
日弁連の現執行部の方々は、このような事件は取り扱わないのかも知れませんが、軽々に、信頼回復を叫ぶだけではなく、我々に、明確な指針を示して頂きたいものです。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ