以下は、朝日新聞デジタル(2013年03月17日)からの引用です。
「弁護士ら法律家の数や法科大学院のあり方について見直しを議論している政府の「法曹養成制度検討会議」(座長・佐々木毅学習院大教授)が、司法試験の合格者数を「年間3千人程度」とした2002年の政府計画の撤廃を提言する見通しになった。
4月に公表する中間素案に盛り込む方向だ。
法曹3千人計画は01年に公表された司法制度改革審議会の意見書に基づき、10年ごろに達成する目標として閣議決定した。
しかし、法科大学院修了者を対象とした新司法試験の合格者は年2千人前後で低迷。
「社会の隅々に法律家を」という理念のもとで進められた司法制度改革の大きな柱が見直されることになる。
法務省によると、昨年の合格者は2102人で、合格率は25・1%。
当初の想定の7〜8割を下回った。
合格率の低迷で法科大学院への志願者も減少。
昨春の志願者は1万8446人で、法科大学院ができた04年度の約4分の1まで落ち込んでいる。
合格後の状況も厳しい。
企業、地方自治体、国際機関など弁護士の活躍の場が増えると想定されたが、就職難が問題化。
民事訴訟の件数も増えていない。
日本弁護士連合会は昨春、「需要は伸びていない」として合格者数を年1500人に減らすよう提言した。
こうした状況を踏まえ、政府は12年8月、法曹養成制度の見直しを議論する検討会議の設置を閣議決定。
検討の過程では「司法改革の理念として目標を残したほうがいい」などの指摘も出たが、「3千人の目標は現実的ではない」という意見が大勢を占めた。
ただ、「人為的に目標を設定すべきではない」との意見もあり、新たな数値目標は設定しない方向だ。
法科大学院を所管する下村博文・文部科学相も先月、3千人計画について「間違っていたのではないか。政府側も謙虚に反省するべきところに来ている」と述べ、見直しの必要性を示していた。
検討会議は、法相や文科相らでつくる法曹養成制度関係閣僚会議の下部組織。
法曹人口のほか、募集停止中も含めて全国で74校ある法科大学院の統廃合などを議論している。
5月に中間素案への意見を募った後、今夏には見直し内容をまとめる方針だ。
〈法曹3千人計画〉
司法制度改革審議会の意見書は「質量ともに豊かな法曹の確保」を掲げ、2018年ごろの日本の法律家人口を5万人と想定。
弁護士1人あたりの人口を先進国で最少だったフランス並みを目指した。
これを受けて政府の計画も、司法試験合格者数を年3千人程度とした。
一方で旧来の試験では「受験エリート」が増える懸念があるとし、新設する法科大学院の修了を受験資格とする新試験を導入。
社会人経験者ら多様な人材を呼び込み、2〜3年かけて法律知識と教養を身につけさせれば7〜8割が合格すると見込んでいた。
11年度時点の法律家の人口は約3万5千人。 」
弁護士1人あたりの人口を先進国で最少だったフランス並みを目指したというのが、そもそものボタンの掛け違いで、我が国では、隣接法律専門職種として存在している司法書士・行政書士・社会保険労務士・土地家屋調査士などは、諸外国には殆ど存在しませんし、国によっては、税理士すら存在しませんので↓、そのような状況の下で、弁護士の数だけを比較するのは、元々ナンセンスな話でした。
http://www.moj.go.jp/content/000102262.pdf
しかも、その後、弁護士はほぼ倍増となった上に、司法書士には、簡裁事件の代理権、社会保険労務士には、個別労働関係紛争に関する紛争解決手続の代理権、土地家屋調査士には、民間紛争解決手続における代理権が認められていますし、行政書士には、書類を官公署に提出する手続代理権や、契約その他に関する書類作成の代理権が認められているほか、現在、行政不服審査法における不服申立に関して、代理権が認められる方向で法改正が検討されているそうですので、「社会の隅々に法律家を」という理念は、充分に達成されたのではないでしょうか。
年間3000人程度という人為的な目標が、間違いの元だった訳ですから、「人為的に目標を設定すべきではない」というのは、その通りかも知れません。
特に目標を設定しなくても、合格率の低迷している法科大学院は統廃合されて行くのでしょうし、何より、昨春の法科大学院志願者は、法科大学院ができた04年度の約4分の1まで落ち込んでいますので、有能な人材が法曹を目指さなくなる結果として、一定の能力を合格の条件とする限り、自ずと司法試験合格者も減少していき、どこかで均衡するのだと思います。
しかし、司法は最後の砦なのに、そんな尻つぼみのような形で均衡するのが、本当に良いのだろうかという気がしてなりません。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ