以下は、YOMIURI ONLINE(2013年3月15日)からの引用です。
「知的障害のある女性(59)の預貯金を成年後見人の親族が着服したのは、後見人を選任した奈良家裁葛城支部と後見監督人だった弁護士(奈良弁護士会)が注意を怠ったためとして、女性が国と弁護士に約4500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が14日、大阪地裁堺支部であった。
大藪和男裁判長は「後見監督人として必要な調査を一切しなかった」と述べ、弁護士に約4100万円の支払いを命じた。
国への請求は棄却した。
後見監督人は、後見人の活動が適切かどうかをチェックするため、家裁が必要に応じて選任する。
後見人による着服が全国で相次ぐ中、監督人の賠償責任が認められるのは極めて異例。
判決によると、葛城支部は2005年3月、弁護士を後見監督人に選任。
08年9月、当時後見人だった親族の男性らが女性の預貯金から計約7500万円を着服していたことが発覚した。
判決で大藪裁判長は、弁護士は家裁が必要な調査をしていると誤認し、選任後の3年半、女性の財産状況を把握していなかったと認定。
「弁護士は監督人の役割を理解し、家裁から具体的な指示がなくても自らの判断で職務を行うべきだった」と指摘した。
同支部も調査をしていなかったが、「後見監督人から必要に応じて報告があると期待したとしても不当ではない」とした。
着服を巡っては、事実上預貯金を管理していた男性の長女が起訴され、懲役5年の実刑が確定している。
判決について、弁護士は「監督人として何が必要かを確認していれば着服は防げた。落ち度があったと思う」と話し、女性の現後見人の北岡秀晃弁護士は「国の責任は問わないという均衡を欠いた判決。控訴を検討したい」としている。
最高裁によると、10年6月〜12年9月、成年後見人による財産横領などの不正は898件で、被害総額は83億円。
被害件数のうち98%は親族が後見人を務めていたケースという。」
前回の調査結果↓では、2010年6月から2011年3月までの10か月間で計182件、被害総額18億3000万円だったのが、その後の調査結果も含めると、2010年6月から2012年9月までの28か月間で計898件、被害総額は83億円と、件数、被害額共に、大幅に増えていますね。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/231316387.html
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/231441745.html
判断能力を欠く状況となってしまった方の財産を適正に管理するのが、成年後見制度の大きな目的の1つなのに、本末転倒の結果となっています。
3年半何もしかなった後見監督人の責任が認められるのは仕方がないことだとは思いますが、どの程度の頻度で、成年後見人に報告を求めれば、責任を問われなくて済むのでしょうか。
同じく3年半何もしかなった裁判所の責任がないというのは、いかがなものでしょうか。
この判決を前提とすると、後見監督人が選任されていない場合には、裁判所の責任が認められるということになるのでしょうか。
そうなると、裁判所は、できるだけ後見監督人を選任する方向に向かうことになるように思いますが、勿論、無報酬という訳ではなく、ご本人の負担となりますので、いかがなものでしょうか。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ