以下は、朝日新聞デジタル(2013年03月04日)からの引用です。
「東京都中央区の歯科医院で2007年、インプラント(人工歯根)手術を受けた女性(当時70)が死亡した事故で、東京地裁は4日、業務上過失致死の罪に問われた歯科医師・飯野久之(ひさし)被告(68)に禁錮1年6カ月執行猶予3年(求刑禁錮2年)の判決を言い渡した。
吉村典晃裁判長は「かなりの症例数を誇る専門家でありながら、医師に期待される水準に対応する努力を怠った」と批判する一方、遺族との間で和解が成立していることなどを考慮した。
無罪を訴えていた飯野被告は即日、控訴した。
インプラント手術は、歯が抜けた部分に人工歯根を埋め込み、義歯を取り付ける治療法。
飯野被告が、女性の下あごをドリルで貫通させる方法を用いた結果、動脈を傷つけて大量の出血を招いたことについて、過失があったかどうかが裁判で争われた。
被告が採った方法について弁護側は「当時は医師の間でも危険性が認識されておらず、事故は予測できなかった」と主張した。
しかし判決は、当時の文献などから医師の間で危険性が知られており、一般的ではなかったと指摘。
「被告は危険性を十分に検討すべきだった」と退けた。
判決によると、飯野被告は07年5月22日、女性の右奥歯に人工歯根を埋め込む際、ドリル挿入の角度や深さの調整を怠り、下あごの動脈を傷つけた。
女性は出血などにより、死亡した。」
遺族が、過失を前提としないお見舞金程度の金額で和解するとは思えないので、和解が成立しているということは、民事的には、過失を認めているということだと思います。
当事者間の損害賠償責任の有無を判断する民事よりも、刑事責任の有無を判断する刑事の方が、過失の認定のハードルは高いとは言われていますが、民事的には過失を認めているのに、刑事的には過失を争うというのは、やはり難しいと思います。
刑事責任を否定し、無罪を主張する一方で、情状弁護のために、被害弁償はしておきたいという事件は、確かにありますが、非常に悩ましい問題です。
免許取消や停止などの処分は、判決が確定するまでは行われないそうなので、控訴が棄却されたら、上告するのでしょうかね。
ただ、引き延ばしが目的なのであれば、控訴期限ギリギリの方が意味があるので、即日控訴したということは、そういう意図ではないということでしょうか。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ