以下は、朝日新聞デジタル(2013年3月4日)からの引用です。
「家具大手ニトリ(本社・札幌市)で買った椅子の脚が折れ、転んで大けがをした結果、うつ病になったとして、北九州市の40代の女性が損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)は、ニトリ側の上告を退ける決定をした。
2月28日付。
事故とうつ病の因果関係を認め、1580万円の賠償をニトリに命じた2011年12月の二審・福岡高裁判決が確定した。
二審判決によると、女性は08年11月、ニトリで買った椅子(商品名「パーソナルチェアウルフ2」、品番RD6200R)に座って1歳の長男をひざに乗せようとしたところ、溶接の不具合のため椅子の脚が折れた。
転んだ際に腰の骨が折れて身動きがとれなくなり、家族の面倒をみることができなくなるなどしたため、うつ病を発症した。
ニトリ側は椅子に欠陥があったことを認めた上で、事故とうつ病の因果関係を争った。
二審判決は「家族に迷惑をかけているという負い目、健康が回復しないことへの不安や焦りなどが重なった」と指摘した。
ニトリホールディングス広報は「最高裁の判断内容を確認中で、コメントは差し控えたい」としている。」
過重労働・パワハラ・セクハラなど、いかにも精神的疾患との因果関係が認められそうな事案だけでなく、本件のような突発的な事故と、精神的疾患との因果関係を認めた判例は、少なくありません。
例えば、最高裁平成5年9月9日判決は、「交通事故により受傷した被害者が自殺した場合において、その傷害が身体に重大な器質的障害を伴う後遺症を残すようなものでなかったとしても、右事故の態様が加害者の一方的過失によるものであって被害者に大きな精神的衝撃を与え、その衝撃が長い年月にわたって残るようなものであったこと、その後の補償交渉が円滑に進行しなかったことなどが原因となって、被害者が、災害神経症状態に陥り、その状態から抜け出せないままうつ病になり、その改善をみないまま自殺に至ったなど判示の事実関係の下では、右事故と被害者の自殺との間に相当因果関係がある。」と判示し、死亡による損害額の8割を減額した原審判決を維持しています↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=63037&hanreiKbn=02
勿論、因果関係を否定した判例も、これまた少なくないですが、上告理由は、極めて限定されていますので(何でもかんでも上告されたら最高裁がパンクしてしまう)、一般論としては、上告が認められる可能性は、低かったと思います。
このような事故があり、裁判沙汰になっているということは、少なくとも全国的には報道されていなかったと思いますので、ニトリにとっては、単に無駄だったというだけでなく、大きな損失なのではないかと思います。
ただ、製造物責任保険(PL保険)が絡んでいる筈なので、上告が、ニトリの意向だったかどうかは、何とも言えませんが。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
http://www.tax-hoken.com/smart/detail.php?pid=ay5bUHxEZU
のような背景があるようですけれども。