以下は、YOMIURI ONLINE(2013年2月25日)からの引用です。
「スマートフォン内の個人情報を抜き取るウイルスを仕込んだとしてアプリを提供した会社の元会長らが警視庁に逮捕された「ザ・ムービー事件」。
逮捕された5人全員が昨年末に不起訴になって以降、同種のアプリが横行している。
ウイルス対策会社によると、今年になって見つかった情報抜き取り型アプリは20種類近くにのぼる。
専門家は「悪質なタイプも多い。不起訴がお墨付きだと思ってほしくはない」と懸念している。
「ムービー事件が不起訴になってよかった」
こう歓迎するのは、無料アプリ「全国電話帳」を作った神奈川県のアプリ開発者の男性(34)だ。
インストールすると、スマホに入っている電話帳内の住所、氏名、電話番号、メールアドレスが外部送信されるアプリで、昨年9月の公開以来、少なくとも76万人分の情報が男性側に送られたという。
その後、アプリの情報送信が問題視されたため、男性はいったん公開を中止していたが、昨年12月31日、「全国共有電話帳」と名称を変えて再び公開。
「ザ・ムービー」事件で、元会長らの不起訴が発表された4日後だった。
今月中旬にアプリ公開先のグーグルが「規約に違反する」として公開を中止させたが、それまでの間に約1万人分の情報を入手した。
男性は「刑法に違反しないことは明らか」と主張する。
このほかにも、電話帳の内容を抜き取るアプリが続々と公開されている。
ウイルス対策会社「シマンテック」は1月以降、少なくとも18種類を発見。
「最速充電」などの名称で、スマホの充電時間を短くする機能を装うアプリもあったが、いずれも実際にはそうした機能はなかった。」
ザ・ムービー事件では、刑法第168条の2第2項の「不正指令電磁的記録供用罪」(正当な理由がないのに、人が電子計算機を使用するに際して…その意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録を、人の電子計算機における実行の用に供した者。3年以下の懲役又は50万円以下の罰金。)の容疑で逮捕されたようですが、結局、不起訴処分となりました。
@気付いていたかどうかはともかくとして、個人情報を収集されることに、ユーザーが同意してしまっていること、Aアプリがユーザーに説明した通り動画を再生する機能を満たしていることから、「意図に反する動作」という要件を立証することができないと判断したようです。
ユーザーは、一定の機能を果たすことを前提として、同意しているのですから、実際に機能を果たさないアプリであれば、同意に効力はなく、犯罪成立ということになるのでしょうかね。
それはともかく、犯罪になろうがなるまいが、個々のユーザーが、何らかの便利さと引き換えに、自分の電話帳データ、すなわち自分の知り合いの氏名、電話番号、メールアドレス等の情報を、本人の同意もなしに、提供することになるということに対して、もう少し慎重に考える必要があると思います。
facebookやLINEなどにも、電話帳データを収集する機能がありますが、勝手にデータを収集されるのは、余り気持ちの良いことではありません。
勿論、目的の範囲内でしか使用しないことになっているのでしょうし、厳重な管理体制を敷いているのだとは思いますが、サイバー攻撃に遭っても、絶対大丈夫という保証は、どこにもありません。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ