以下は、朝日新聞デジタル(2013年2月14日)からの引用です。
「「別れさせ屋」は公序良俗に反するから自分が依頼した契約は無効だとして、宮城県内の女性が東京都の調査会社に約107万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。
昨年12月25日付。
「別れさせ屋」は、依頼を受けて交際相手がいる人に異性を近づかせるなどして、「破局」をうながす。
訴状によると、女性は2006年12月、交際していた男性の浮気を知り、「別れさせ屋」をうたう調査会社に浮気解消を依頼した。
80万円を支払ったが、ほとんど仕事はされず、浮気も解消しなかったという。
女性は、「別れさせ屋」は他人の恋愛感情に不当に干渉し公序良俗に反しているので、自分が依頼した契約は無効だと主張。
消費者金融で借りた80万円に金利が加わり、実際に支払った107万円を賠償するよう求めている。
調査会社は「追って法廷で主張する」としている。」
107万円の損害賠償なのに、簡易裁判所ではなく、地方裁判所というのも疑問ですが、法律構成が、公序良俗違反で無効というのも疑問ですね。
民法708条は、「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。」と定めています。
「不法原因給付」と呼ばれ、「不法をなすものには法は手を貸さない」という「クリーンハンズの原則」の表明と言われています。
自ら浮気解消を依頼したのですから、不法な原因がもっぱら調査会社側だけにあり、708条但書きの適用があるというのは、非常に苦しいと思います。
ヤミ金の場合は、自ら進んで借り入れをしても、返済したお金の全額返還が認められていますが↓、ヤミ金は、出資法違反という明確な犯罪行為ですので、本件を、これと同列に論ずることは、難しいように思います。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=36427&hanreiKbn=02
給付した側の不法性が受益者のそれに比しきわめて微弱なものに過ぎない場合には、民法第90条および第708条は適用がないとする最高裁判決もありますが↓、本件にこの判決をあてはめると、契約は無効ではないということになってしまい、代金の返還を求める根拠がなくなってしまいます。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=57301&hanreiKbn=02
「ほとんど仕事はされず、浮気も解消しなかった」というのですから、端的に、債務不履行というのが、素直な法律構成だと思いますが、契約書には、それが不可能な条項が並んでいるということなのですかね。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ