以下は、毎日jp(2013年01月23日)からの引用です。
「最高裁で違法と確定した東京都檜原(ひのはら)村の公金支出を巡り、村議会が坂本義次(よしじ)村長に対する賠償請求権を放棄した議決の可否が問われた住民訴訟で、東京地裁(八木一洋裁判長)は23日、原告住民側の請求を認め、「違法な議決で請求権放棄は無効」と判断した。
「違法支出の責任を骨抜きにする」との批判が強かった請求権放棄議決を巡っては、最高裁が昨年4月、「個々の事案ごとに支出の性質や内容などの事情を総合考慮すべきだ」と判断。
原告側代理人によると、最高裁判断以降、初の違法判決。
判決によると、村長は05年4月から2年間、勧奨退職に応じた課長を嘱託職員として再雇用したが、管理職手当など約756万円を支払った。
この手当の是非が別の住民訴訟で争われ、東京高裁は08年12月、村長に返還請求するよう村に命じた。
しかし、村議会は09年3月、村長への請求権放棄を議決。
その後、最高裁で高裁判決が確定したが、村長は議決を理由に返還しなかった。
このため住民側は村代表監査委員を相手に、今回の訴訟を起こした。
判決は「管理職手当支給時に適法性の問題を容易に認識できた。村財政への影響は否定できず村長の責任は小さくない。議決に合理的理由があったとは言い難い」と指摘。
代表監査委員は「大変厳しい判決。控訴する方向で検討する」と話した。」
続いて、以下は、同じく毎日jp(2013年01月24日)からの引用です。
檜原村住民訴訟:「問題点指摘」に意義 原告ら、勝訴の判決評価 /東京
「(村議会の)議決には重要な事実誤認があり違法−−。
最高裁が違法と認めた檜原村の公金支出とその損害賠償責任について、村議会が村長への損害賠償請求権を議決で放棄したことの妥当性が注目された住民訴訟で、東京地裁は23日、原告勝訴の判決を下した。
原告らは「違法なことまで議会が許してしまえることの問題点が指摘された」とその意義を評価した。
請求権放棄の議決の適否を巡っては昨年4月、最高裁が「(有効性は)諸般の事情を考慮する」との判断を示している。
判決後に千代田区の司法記者クラブで記者会見した原告代理人の窪田之喜(ゆきよし)弁護士は「(最高裁で確定した)嘱託職員に対する手当支給は違法だという点について村長は知っておくべきだったとする事情が考慮された」と解説した。
原告の1人で元村議の田倉栄さん(71)は「議決は議会の裁量権だが、違法に支出された公金の債権放棄まで圧倒的多数で決めてしまった議会の問題点は大きい」とし、「判決は、村民らが主体的に地方自治について考えるきっかけになる」と話した。
また、05年にこの違法な公金支出について提訴した村議の丸山美子さん(63)は「地方自治は話し合いを重ねて合意プロセスを踏んでいくもの。この結果を踏まえ、村長や議員らとしっかり議論していきたい」と語った。
一方、今回の訴訟で村長に支払いを求める訴訟を起こさないのは違法だとして被告となった村代表監査委員の福田宮夫さんは「大変厳しい判決と認識している。今後、控訴する方針で検討したい」とコメント。
坂本義次(よしじ)村長は、自身が被告でないことや1審判決であることを理由にコメントは控えるとした。
請求権放棄の議決を違法とされた村議会の土屋国武議長は毎日新聞の取材に対し、「詳しいことが分からないので何も言えない」と答える一方、当時の議会の判断については「間違っていないと思う」と述べた。」
昨年4月の最高裁判決というのは、この2つの判決のことだと思います↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82208&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82206&hanreiKbn=02
両判決とも、全員一致の判断ではありますが、特に前者の判決では、裁判官全員が個別の意見を述べており、喧々諤々の議論の跡が伺われます。
両判決とも、長文ですが、要するところ、本件とは異なり最高裁ではないものの、第1審が認めた首長に対する損害賠償請求権を、その後、議会が議決ないし条例で放棄したので、原審である高等裁判所が、「裁判所の判断を踏みにじるなんて、ふざけるな」とばかりに、放棄した事実だけを捉えて、議会の裁量権の逸脱・濫用であると断じたのに対し、最高裁判所は、「もう少し冷静に、諸般の事情を総合考慮しなさい」と判断した訳です。
ですので、今回の地裁判決の全文は読むことはできていませんが、単に、最高裁で違法と確定したからというのが理由ではなく、諸般の事情を総合考慮した上での判断だと思いますし、同様の流れだからと言って、必ずしも同様の判断にはならないと思います。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ