以下は、朝日新聞デジタル(2013年1月21日)からの引用です。
「紙の本を裁断・スキャンしてパソコンなどに取り込み、電子書籍化する「自炊」を代行するのは違法だとして、浅田次郎氏ら7人の作家と漫画家が7業者に差し止めと損害賠償を求めた訴訟で、3業者分の第1回口頭弁論が21日、東京地裁であり、うち2業者は争う姿勢を示した。
一方、東京都江戸川区の業者は請求を受け入れ、謝罪すると表明。
今月10日にホームページを閉鎖して代行を中止しているとし、7人に計147万円を賠償する考えを明らかにした。
ほかに訴えているのは、大沢在昌、永井豪、林真理子、東野圭吾、弘兼憲史、武論尊の各氏。
自炊代行業者をめぐっては、浅田氏らはこの7業者とは別の2業者に対し、代行事業の差し止めを求める訴訟を2011年12月に起こしていたが、業者側が請求を認めるなどしたため、すでに終結している。」
2011年12月に起こした訴訟の顛末は↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/271804115.html
今回の訴え提起の際の報道は↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/304362351.html
訴える側にとっては、7業者を全員を相被告として、1つの訴訟を起こした方が、同じ主張立証を何度もしなくて済むので、効率的なように思うのですが、危険の分散のため、複数の裁判官の下で審理してもらうために、幾つかのグループに分けて、複数の訴訟を起こしたということでしょうか。
それとも、単に、7業者のうち、4業者が、訴状の受け取りを拒絶するなどして、送達が間に合わなかったということでしょうか。
「無断スキャンが著作権侵害にあたるという確たる判決を得たい」とのことでしたが、自炊代行の差し止めと計147万円の損害賠償を求める訴えの全てを認められてしまうと、全面的に請求が認めらた以上は、裁判所が判断する必要がなくなるので、それで訴訟は終了してしまいます(請求の認諾)。
7人分の本の自炊代行で、147万円もの利益を得ているとは思えませんが、恐らく、請求を認諾した業者は、これまでに、全体として、147万円をはるかに超える利益を得ているからこそ、請求を認諾したのだと思います。
請求の認諾は、原告の請求を全面的に認めるものなので、原告の同意は必要なく、時期を問わず可能ですので、他の業者も、形勢が不利になれば、同様に、請求を認諾する可能性があります。
そして、別法人で、再び自炊代行を行うといういたちごっこが続く可能性があります。
「確たる判決を得たい」のであれば、多少の印紙代はかかりますが、認諾できない位の額の損害賠償請求をすべきでしょうし、今からでも請求の拡張は可能です。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ