2013年01月17日

警視庁発表「名誉毀損」=アレフ勝訴、都に賠償命令−長官銃撃めぐる訴訟・東京地裁


以下は、時事ドットコム(2013/01/15)からの引用です。

「警察庁長官銃撃事件をめぐり、オウム真理教の信者グループによるテロだったとする捜査結果を警視庁が公表したのは名誉毀損(きそん)に当たるなどとして、教団の主流派団体アレフが東京都と池田克彦前警視総監(現原子力規制庁長官)に5000万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が15日、東京地裁であった。

石井浩裁判長は警視庁による名誉毀損を認め、都に100万円の賠償と謝罪文の交付を命じた。

池田氏への請求は退けた。

石井裁判長は、公表はオウム真理教が組織的に銃撃事件を実行したとの印象を与えると指摘。

「アレフはオウム真理教が名称を変えたにすぎず、実質的に同一の団体だと一般的に認識されているのは明らかだ」として、公表でアレフの社会的評価が低下したと認定した。

その上で「無罪推定の原則に反するばかりでなく、検察官が起訴した内容について公正中立な裁判所が判断を下すという日本の刑事司法制度の基本原則を根底から揺るがす、重大な違法性を持つ行為だ」と批判した。

公表内容が真実かどうかについては、都側が主張をしておらず、判決は判断を示さなかった。」




憲法17条は、「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。」と定めており、これを受けて、国家賠償法1条は、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」と定めています。

当然のことだと思うかも知れませんが、旧憲法下では、国家無答責の法理、すなわち、官吏は天皇に対してのみ責任を負い、公権力の行使に当たる行為によって市民に損害を加えても、国家は損害賠償責任を負わないという法理が、当然のこととされていました。

アレフの肩を持つ訳ではありませんが、起訴することができずに公訴時効が成立してしまったのに、「オウム真理教の信者による組織的なテロである」と断定して公表することが、とんでもない話だということは、誰にでもわかる話で、「無罪推定の原則に反するばかりでなく、検察官が起訴した内容について公正中立な裁判所が判断を下すという日本の刑事司法制度の基本原則を根底から揺るがす、重大な違法性を持つ行為だ」という割には、慰謝料100万円というのは、いかがなものかと思います。

ちなみに、池田氏個人への請求が認められなかったのは、判例は、国家賠償法による責任を、公務員自身が負う責任を、国等が代位しているとする代位責任説を取っているからで、例えば、最高裁昭和30年4月19日判決は、「公権力の行使に当る公務員の職務行為に基く損害については、国または公共団体が賠償の責に任じ、職務の執行に当つた公務員は、行政機関としての地位においても、個人としても、被害者に対しその責任を負担するものではない。」と判示しています↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=57438&hanreiKbn=02

札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
posted by 森越 壮史郎 at 12:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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