以下は、J-CASTニュース(2013/01/07)からの引用です。
「チノパンこと元フジテレビの千野志麻(しお)アナ(35)が起こした死亡事故を巡って、「なんで逮捕されないんだ?」といった不満や疑問がネット上で相次いでいる。
ただ、警察は「重大な過失がないと逮捕しない」と説明している。
この後処分はどうなるのか。
千野アナが2013年1月2日夕に事故を起こして5日経ったが、ネット上では、書き込みが絶えず、炎上状態になったままだ。
「重大な過失がないと、通常は逮捕しません」
事故の状況についての詳しい報道はなく、千野アナからも説明もない。
事故翌日にホームページ上で謝罪したが、それも削除され、沈黙が続いている。
報道で分かったのは、千野アナが静岡県沼津市のシティホテル駐車場内で、SUV車を運転して通路を右折したところ、歩いていた長野県在住の看護師男性(38)と接触し、男性はそのまま車の前に倒れて胸や腹をひかれてしまったというだけだ。
その後の報道によると、千野アナの不注意が原因で男性に気づかなかったとして、沼津署が千野アナを自動車運転過失致死の疑いで書類送検する方針を固めた。
送検されれば、千野アナは容疑者の呼称で呼ばれることにもなる。
死亡事故を起こした場合、加害者が逮捕されたというニュースがしばしば流れている。
それだけに、ネット上では、千野アナの場合はなぜ逮捕されないのか疑問が多いようだ。
千野アナの父親が沼津市議をしており、夫は福田康夫元首相のおいであることなどから、警察に圧力がかかったのではとの根拠のない憶測まで出ている。
逮捕しない理由について、沼津署の副署長は、取材に対し、「理由は特に発表していません」としながらも、こう説明した。
「重大な過失がないと、通常は逮捕しません。今回は、逃走や証拠隠滅の恐れもなく、様々な状況を考え合わせて判断しました」
親族から政治的圧力がかかったことも強く否定
有名人だから逃げたりしないと考えたのかについては、沼津署の副署長は、「そんなことはないです」とし、千野志麻アナの親族から政治的圧力がかかったことも強く否定した。
警察が逮捕しなかったことについて、板倉宏日大名誉教授(刑法)は、こうみる。
「千野さんは、事故後すぐに警察に110番通報していますし、重大な過失があったとも言えません。ですから、警察は、逮捕する必要がないと判断したのでは。送検されても、略式起訴されて、50万円の罰金になると思います。任意保険なども入っているでしょうから、ほかに千野さんの経済的負担はないはずですよ」
被害者の男性に車の陰から飛び出すなどの過失があったかは分かっていないが、板倉名誉教授は、「たとえ被害者が全然悪くなかったとしても、今回は逮捕しないでしょう」と言う。
報道によると、千野アナは2013年1月6日夕、被害者男性の通夜に参列し、事故後初めて報道陣の前に姿を見せた。記者らに10秒以上深々と頭を下げたが、問いかけには「申し訳ありませんでした」と言うのみだったという。
ネット上では、千野アナが説明すべきだとの声は強い。
しかし、現在は事故を起こしたことで憔悴し切っていると報じられており、記者会見の予定などは明らかにされていない。」
死亡事故だからと言って、必ずしも逮捕される訳ではないというのは、私自身の経験からも、その通りです。
勿論、私自身が死亡事故を起こしたという訳ではなく、死亡事故を起こして在宅(逮捕・勾留されない)のまま公判請求された被告人の刑事弁護を、複数経験しているということで、その被告人らも、ごく普通の一般市民でした。
ということは、略式罰金が当然ではないということになりますし、札幌弁護士会の量刑等検索システムで検索すると(一般の方は利用できません)、被害者(死亡者)が1人で、前科前歴がなくても、公判請求された被告人は沢山いますし、執行猶予が付かず、実刑になっている被告人も少なくありません。
死亡事故で略式罰金はあり得ないとは言いませんが、むしろ例外ではないかと思います。
人の命を奪っても、重大な過失がなく、対人無制限の任意保険にさえ加入していれば、略式罰金で終わって当然と取られかねないような報道は、いかがなものかと思います。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ