刑事事件の方がセンセーショナルなので、ニュースで取り上げられる機会が多いため、どうしても、私のブログも、刑事事件に関するものが多くなりがちですが、私は、刑事事件専門の弁護士でも、刑事事件に詳しい弁護士でもありません↓
http://www.morikoshi-law.com/
という訳で、民事事件も積極的に取り上げて行こうと思いますが、報道では見聞しないものの、裁判所のホームページに、借地借家法上の定期建物賃貸借に関する9月13日付の最高裁判決が掲載されています↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82539&hanreiKbn=02
借地借家法第38条1項は、「期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。」と定めています。
同条2項は、「前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。」と定めています。
原審の東京高裁判決は、「賃借人が、本件契約書には本件賃貸借が定期建物賃貸借であり契約の更新がない旨明記されていることを認識していた上、事前に賃貸人から本件契約書の原案を送付され、その内容を検討していたこと等に照らすと、更に別個の書面が交付されたとしても本件賃貸借が定期建物賃貸借であることについての賃借人の基本的な認識に差が生ずるとはいえないから、本件契約書とは別個独立の書面を交付する必要性は極めて低く、本件定期借家条項を無効とすることは相当でない。」と判示しました。
しかし、最高裁判決は、これを全面的に否定し、「法38条2項所定の書面は、賃借人が、当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず、契約書とは別個独立の書面であることを要する。」と判示しました。
東京高裁は、事前に送付した契約書の原案には、当該賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することが記載されているのだから、それで充分じゃないかと判断した訳ですが、最高裁は、それでは足りず、別個の書面が必要だと判断した訳です。
要は、賃貸人としては、賃借人に対して、あらかじめ、「本件賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了する」旨を記載した書面を交付して説明し、賃借人から、「当該書面を受け取り説明を受けた」旨の文書に署名捺印をして貰っていれば良かった訳ですし(実際には、双方とも、もう少し詳しい記載が必要でしょうが)、賃借人が署名捺印を拒むこともなかったと思うのですが…。
不動産業者が仲介していれば、重要事項説明書に当然記載されていた筈ですが、賃貸人が不動産賃貸等を業とする会社、賃借人が貸室の経営等を業とする会社ということなので、直接契約だったのでしょうね。
とにかく、僅かな労を惜しんだために、5年間で返して貰う予定だった建物なのに、半永久的に賃貸し続けなければならない結果となる訳ですから、充分注意が必要ですね。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ