以下は、YOMIURI ONLINE(2012年12月18日)からの引用です。
「覚醒剤を使用したとして覚醒剤取締法違反に問われ、1審・横浜地裁で懲役2年8月の実刑判決を受けた無職男性(50)について、東京高裁(小西秀宣裁判長)は18日、1審判決を破棄し、逆転無罪の判決を言い渡した。
判決は、男性が密売人から覚醒剤を注射するよう強要されたと認定し、危険を避けるためにやむを得ずした行為には刑罰を科さない「緊急避難」が成立するとした。
男性は1審で、警察から薬物密売事件の調査を依頼され、今年1月、密売人と接触した際、頭に拳銃を突きつけられて覚醒剤を自分で注射するよう強要されたと主張。
しかし、密売人の名前などは明かさず、地裁は「荒唐無稽だ」と退けた。
控訴審で男性側は、密売人が暴力団幹部だったことや注射した場所を明示。
弁護人によると、判決は「主張は具体的で一貫しており、信用できる」としたという。」
攻撃してきた相手方に反撃して、その相手方に怪我をさせたような場合は、正当防衛(刑法36条1項「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。」)の成否が問題となりますが↓、今回の事件は、攻撃してきた相手方の権利を侵害するものではないので、緊急避難(刑法37条1項「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。」)の成否が問題となります。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/254719263.html
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/archives/20120427-1.html
高裁の裁判官も、随分思い切った判決を書いたものですが、地裁の段階では、関係者が傍聴席に座っていたので、具体的な話ができなかったということでしょうか。
それにしても、良いことなのか、そうでないのか、何とも言えませんが、警察・検察は、自ら薬物密売事件の調査を依頼した人物でも、覚醒剤が検出されれば、逮捕・勾留・起訴するのですね。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ