以下は、時事ドットコム(2012/12/12)からの引用です。
「兵庫県加西市で2011年12月、小学生の兄弟が皆既月食を観察した帰りに軽トラックにはねられ死亡した事故で、危険運転致死罪などに問われた小池巧被告(54)の裁判員裁判の判決で、神戸地裁は12日、懲役14年(求刑懲役18年)を言い渡した。
奥田哲也裁判長は「正常な運転が困難な状況で運転した」として、自動車運転過失致死罪の適用を求めた弁護側主張を退けた。
その上で「遺族の悲しみは察するに余りある。被告は以前から飲酒運転を繰り返しており、責任は重い」と述べた。
同被告は、自動車運転過失致死罪で起訴されたが、その後の捜査で危険運転罪に訴因変更された。
弁護側は「酔いは中程度で、突然睡魔に襲われた」と主張していた。
判決によると、小池被告は11年12月10日、酒を飲んで軽トラを運転し、生田敦弘君=当時(12)=と弟の汰成君=同(8)=をはねて死亡させた。」
10日が論告・求刑、弁論だったのですが、その僅か2日後に判決とは、裁判員裁判とはいえ、随分早いですね。
という訳で、以下は、MSN産経ニュース(2012.12.10)からの引用です。
危険運転で懲役18年求刑 小学生の兄弟死亡事故公判
「兵庫県加西市で昨年12月、皆既月食を観測した帰りに小学生の兄弟が車にはねられ死亡した事故で、危険運転致死罪などに問われた建築業、小池巧被告(54)の裁判員裁判の論告求刑公判が10日、神戸地裁(奥田哲也裁判長)で開かれ、検察側は懲役18年を求刑した。
検察側は論告で「アルコールの影響で視界が狭まり、正常な運転が困難な状態と認識しながら運転した」と指摘。
「ほかの危険運転致死事件と比較しても重大な事故」と述べ、同罪の成立をあらためて主張した。
遺族の代理人弁護士は「厳重な処罰を望み、懲役23年を求める」と被害者参加制度に基づいて意見を述べた。
被告の弁護側は最終弁論で法定刑の軽い自動車運転過失致死罪の適用を求め、懲役6年が相当と訴えた。」
脱法ハーブではなく↓、アルコールですが、こちらは、法定刑が「1年以上の有期懲役」の危険運転致死罪が適用になるのか、法定刑が「7年以下の懲役」の自動車運転過失致死罪にとどまるのかは、非常に大きな問題でした。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/306385930.html
「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」で運転することは、酒酔い運転として、処罰されることになっていますが(道路交通法117条の2の1項)、危険運転致死罪は、「正常な運転ができないおそれがある状態」では足りず、「正常な運転が困難な状態」であることが必要です(刑法208条の2)。
両者の線引きは、極めて微妙だと思うのですが、「正常な運転が困難な状況で運転した」という報道だけでは、どんな理由で認定したのか、さっぱりわかりませんね。
恐らく、飲酒量、血中アルコール濃度、事故回避措置の有無、事故後の状況などから認定したのだとは思いますが…。
ちなみに、有期懲役の上限は、単独の罪であれば20年(同法12条1項)、併合罪(主として確定裁判を経ていない2個以上の罪、同法45条)として加重する場合でも30年(同法12条2項)、懲役100年というような有期懲役は、我が国ではあり得ません。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81743&hanreiKbn=02
「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」であったか否かを判断するに当たっては,事故の態様のほか,事故前の飲酒量及び酩酊状況,事故前の運転状況,事故後の言動,飲酒検知結果等を総合的に考慮すべきである。」とのことです。