以下は、朝日新聞デジタル(2012年11月22日)からの引用です。
「静岡県湖西市の会員制ゴルフ場から入会を拒否されたとして、性同一性障害で戸籍上の性別を2年前に男性から女性に変えた会社経営者が、運営会社などを相手に約786万円の損害賠償を求めた訴訟を静岡地裁浜松支部に起こした。
運営会社側は20日の第1回口頭弁論で請求棄却を求めた。
訴状によると、会社経営者は6月、運営会社の株を購入するなどして入会に必要な書類や戸籍謄本を提出した。
戸籍謄本から男性だったことが分かり、ゴルフ場は性別変更を理由に入会を拒否。
会社経営者は抗議したが、入会を認めないとする理事会の決定文が届いたと主張している。
運営会社は朝日新聞の取材に「更衣室の利用で女性会員から苦情が出るのを懸念した。前例がなく難しい問題で、解決策が見つからない。代理人と相談する」と説明している。」
私は、ゴルフをしないので、見出しだけ見てもピンと来ませんでしたが、なるほど、更衣室の利用という問題があるのですか。
大浴場のあるゴルフ場もあるようですが、そうなると、尚更、悩ましい問題でしょうね。
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律が、性別の取扱いの変更の審判の要件の1つとして、「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること」(同法3条1項5号)を掲げている理由は、公衆の場とくに公衆浴場などで社会的な混乱を生じないためとのことですので、変更後の性別に従って、公衆浴場を利用することは、想定されているところではあります。
しかしながら、だからと言って、「公衆を入浴させる」(公衆浴場法第1条)という一定の公益性のある許可制の公衆浴場と、会員制のゴルフ場とでは、必ずしも同列に論じることはできないのではないかと思います。
とは言え、運営会社の株の購入までした本人が、到底納得できないのは当然でしょうし、更衣室の利用の点だけが問題なのであれば、訴訟の中で、お互いに譲歩して、例えば、更衣室は利用しないことを条件として、入会を認めるという和解の余地もあるのではないかと思います。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ