以下は、毎日jp(2012年11月21日)からの引用です。
「携帯電話の2年契約プランを中途解約した契約者から9975円の解約金を取る契約条項は消費者契約法に違反するとして、京都市の消費者団体「京都消費者契約ネットワーク」が、ソフトバンクモバイル(SB)に条項の使用差し止めを求めた訴訟の判決が20日、京都地裁であった。
杉江佳治裁判長は「解約によるSBの損害は、解約料を上回る」として請求を棄却した。原告側は控訴する方針。
類似制度を持つ携帯電話大手3社に対し、この団体が同地裁に起こした訴訟のうち、NTTドコモへの判決(今年3月)は敗訴、KDDI(au)への判決(同7月)は一部勝訴した(いずれも控訴中)。
今回で地裁判決が出そろった。
SBは、2年契約の「ホワイトプラン」で基本料金を980円と格安にする代わりに、中途解約すれば9975円を徴収する条項を設けている。
判決によると、1契約当たりのSBの損害額の算定方法について、SB側が主張する「1カ月当たりの逸失利益×解約時点での平均残存月数」を採用。逸失利益や月数の数字は公表されていないが、SBの損害額を1万2964円と認定し、損害額が原告の解約料を上回ることから「合法」と判断した。
会社側の損害額をめぐっては、ドコモ判決が「1カ月当たりの平均割引額×解約までの平均利用月数」との式で算定し、解約金を上回るため「合法」と判断。
au判決は、逸失利益を1カ月4000円と算定し、契約期間の最後の2カ月は解約料を下回るとし、条項を一部無効とした。
原告側の長野浩三弁護士は「消費者の囲い込みが目的の制度で、解約による損害はない」として3判決とも不服としている。
SBは「主張が認められたと理解している」とコメントした。」
当該消費者団体のホームページ↓には、両判決のPDFが掲載されていますが、そのうち、今回のSB判決も掲載されるのではないかと思われます。
http://kccn.jp/
消費者契約法9条1号は、「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」は、当該超える部分つき無効とするものと定めています。
また、同法10条は、「民法 、商法、その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。」ものと定めています。
今回の一連の判決では、上記9条1号の解釈の違いが、結論を分けることになりました。
SB側が主張した「解約時点での平均残存月数」というのは、ドコモ判決の「解約までの平均利用月数」の裏返しですので、今回のSB判決も、ドコモ判決とほぼ同様の考え方によるものと思われます。
すなわち、「解約料は、平均的な解約時期に解約された場合に生じる平均的な損害を上回っていないので有効」という考え方です。
これに対し、KDDI(au)判決は、個々の契約者が実際に解約する時期に応じて検討し、「契約期間の最後の2カ月間に解約した場合には、解約料は、平均的な損害を上回るので、その限りにおいて無効」という考え方です。
「平均的な損害」の解釈の問題でもあり、「当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ」の解釈の問題でもあると思います。
条文を素直に読む限りにおいては、「2年縛り」という区分全体の中での平均的な損害という解釈に傾くように思いますが、元々、消費者保護のための法律なので、「実際の解約時期に応じた平均的な損害を上回るものは無効」という解釈も充分成り立ち得るところで、いずれにしても、最高裁まで行かなければ、決着が着かないものと思われます。
消費者適格団体にしても、差止請求にしても、この消費者契約法により認められたもので、全国各地の弁護士が、殆ど手弁当で関与して、様々な活動を行っているところですが、ある程度の経済的な基盤がなければ、なかなかできないことです。
弁護士の地盤沈下を歓迎するのは、一体誰でしょうか。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ