以下は、朝日新聞デジタル(2012年11月8日)からの引用です。
「神奈川県逗子市で女性が元交際相手の男に刺殺された事件で、男から約20日間で1千通のメールが届きながら、メールを繰り返す嫌がらせをストーカー規制法違反とする明確な規定がなく、神奈川県警が捜査を終えていたことが、県警への取材でわかった。
逗子署によると、この女性は同市小坪6丁目のフリーデザイナー三好梨絵さん(33)。
以前に交際していた元教員の小堤英統(こづつみひでと)容疑者(40)=東京都世田谷区等々力5丁目=が三好さんの自宅に侵入して刺殺し、小堤容疑者はその後に首をつって自殺したとみられる。
2000年に施行されたストーカー規制法は、相手に拒まれたのに連続して電話やファクスをすることを「つきまとい」として禁じているが、メールについての明文規定はない。
同署は今年4月、小堤容疑者から大量のメールが送られてきたという三好さんの相談を受けた。
だが明文規定がないため、メールの繰り返しだけでは同法の適用はできないと判断した。
同法はまた、メールの場合でも、文面に「(交際など)義務のない要求」や「乱暴な言動」などがあれば「つきまとい」と定めている。
メールには「結婚を約束したのに別の男と結婚した。契約不履行で慰謝料を払え」などと書かれていたが、同署は「つきまとい」とまでは言えないと判断。
脅迫事件にも当たらないとして捜査を終えた。
三好さんには、同署から小堤容疑者への口頭注意を提案した。
だが、4月中旬にはメールが止まり、三好さんが「静観したい」と申し出たため注意はせず、以降は月20回ほど三好さん宅周辺のパトロールを続けてきたという。
県警は「法律に基づいた適正な捜査だった」としている。 」
確かに、メールの送信が、ストーカー行為等の規制等に関する法律2条5号の「電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ若しくはファクシミリ装置を用いて送信すること」に該当しないことは明らかです。
しかし、「結婚を約束したのに別の男と結婚した。契約不履行で慰謝料を払え」という文言が、3号の「面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること」に該当しないのかなという気はします。
実際に、婚約不履行があったのだとすれば、金額はともあれ、損害賠償義務はあることになり、「義務のないことを行うことを要求すること」には該当しないことになってしまうでしょうから、単に付き合っていただけなのか、婚約という事実があったのかによって、結論は異なるとは思いますが。
それはさて置き、今回のような事件を見ると、電話やファクスだけでなく、連続してメールを送信するのも、同様に対象にするべきだと思わない人はいないと思います。
ストーカー行為等の規制等に関する法律が制定されたのは平成12年5月24日、今からほぼ12年以上前のことで、その当時は、連続してメールするという態様が、思い浮かばなかっただけの話だと思います。
早急な立法的解決が必要だと思います。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ