以下は、毎日jp(2012年10月27日)からの引用です。
「顧客の債務整理費用を着服したとして業務上横領罪に問われた札幌市東区の元弁護士、竹中雅史被告(56)に対する判決公判が26日、札幌地裁であり、加藤学裁判長は「弁護士に対する社会からの信頼を大きく損なった」などとして懲役2年6月、執行猶予4年(求刑・懲役2年6月)を言い渡した。
判決によると、竹中被告は昨年4〜6月、債務整理の事務費用などの名目で顧客から預かった現金計約170万円を横領した。
弁護側は「金は別居中の妻から要求され、生活費として渡しており、抑うつ状態にあった」と執行猶予を求めていた。
加藤裁判長は「刑事責任を軽くみることはできない」としながらも、「妻からの心身にわたる暴力で抑うつ状態になり判断能力が制限されていた」などと判断した。」
また、以下は、同じく毎日jp(2012年10月11日)からの引用です。
札幌・元弁護士の債務整理費用着服:懲役2年6月求刑 /北海道
「顧客の債務整理費用を着服したとして業務上横領罪に問われた札幌市東区の元弁護士、竹中雅史被告(56)に対する論告求刑公判が10日、札幌地裁(加藤学裁判長)であり、検察側は「社会正義を実現する義務があるのに弁護士に対する信頼、信用を損なった」などとして懲役2年6月を求刑した。
起訴状などによると、竹中被告は昨年4〜6月、妻への生活費支払いのために、依頼者2人から事務費用として預かっていた債務整理手続きのための現金計約170万円を横領したとされる。
10日行われた被告人質問で、竹中被告は「別居中だった元妻に生活費を請求された上、暴力をふるわれ、職業意識が鈍磨していた」などと説明。
弁護側は「当時、抑うつ状態にあり、自首も成立している」として執行猶予付き判決を求めた。」
3年以下の懲役には執行猶予を付けることができますが、逆に、3年を超える懲役は必ず実刑です。
ですので、検察官が実刑を求めるのであれば、懲役3年超を求刑するのが通常で、検察官が懲役2年6月を求刑したということは、暗に「執行猶予相当なのでは」と言っているということになります。
勿論、裁判官は、検察官の求刑を超える判決を言い渡すことはできますし↓、3年以下の懲役でも、執行猶予を付けずに実刑判決を言い渡すことはできますが、裁判官も、検察官の求刑と同じ懲役2年6月、執行猶予が相当と判断したことになります。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/284561604.html
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/275499681.html
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/284175238.html
本件のように、抑うつ状態・自首などと言った酌量すべき情状が立証されると、実刑の場合には、検察官の求刑よりも短い刑期の判決となるのが通常ですが、執行猶予の場合には、求刑通りの判決を言い渡す裁判官が多いような気がします。
「情状酌量したからこそ執行猶予なんだぞ」という思いと、「執行猶予期間中にまた悪いことをしたら、今回の刑も含めて刑務所に行くことになるんだから、刑期は長い方が薬になる」という思いが込められているように思います。
他の報道によると、被害者に対する被害弁償も行ったようですが、被害者がいる犯罪の場合には、弁護人として行うべき被告人にとっての重要な弁護活動の1つですし、法律家の1人として、法律に従いあるべき状態を率先して実現するという意味合いもあると思います。
刑が決まってしまい、特に長期間の実刑ともなると、被害弁償が全く実現されないまま、うやむやになってしまうのが通常ですので。
とにかく、色々事情はあったのでしょうが、被害弁償ができるくらいなら、なぜ横領などしたのか、悔やまれてなりません↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/284733500.html
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ