以下は、毎日jp(2012年10月17日)からの引用です。
「「1票の格差」が最大5.00倍だった10年7月の参院選が違憲だとして全国の有権者が選挙無効を求めた17件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)は17日、定数配分規定を違憲状態と判断した。
是正のための合理的期間は過ぎていないとして、選挙無効を求めた有権者側の上告は棄却した。
最高裁が参院選を違憲状態と判断するのは、最大格差が6.59倍だった92年選挙に対する大法廷判決(96年)以来2度目。
参院選について最高裁は、92年選挙の後に行われた5回の選挙では、5倍前後の格差を合憲と判断してきた。
だが、格差が最大4.86倍だった07年参院選を巡る大法廷判決(09年)は合憲としつつ、「選挙制度の仕組み自体の見直しが必要」と抜本的な制度改革を国会に迫った。
今回の訴訟では高裁判決17件のうち3件が違憲、9件が違憲状態としており、大法廷の判断が注目されていた。」
早速、裁判所のホームページに掲載されていました↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82642&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82641&hanreiKbn=02
70頁以上にもわたる長文というのもすごいですが、本文は15頁であとは補足意見と反対意見というのもすごいです。
合憲、違憲、違憲状態、無効、有効、何のことやらわからないと思います。
投票価値の不平等が合理性を欠くとまでは言えない=合憲=選挙は有効というのは、わかると思います。
では、投票価値の不平等が合理性を欠く=違憲=選挙は無効かと言えば、必ずしもそうではありません。
投票価値の不平等が合理性を欠く場合であっても、直ちに「違憲」ということではなく(最高裁判決の言葉によると「違憲状態」)、これが合理的な期間内に是正されない場合に初めて「違憲」なのだそうです。
では、単なる違憲状態ではなく違憲=選挙は無効かと言えば、これまた必ずしもそうではありません。
公職選挙法219条は、明文で、行政事件訴訟法31条1項の規定(取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができる。この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならない。)は準用しないとしており、選挙訴訟においては事情判決はあり得ない筈なのですが、実際には、最高裁判所昭和51年4月14日大法廷判決などの事情判決が存在します。
結局、@合憲なので有効、A違憲状態だが有効、B違憲だが事情判決ということで有効、C違憲なので無効という、4種類の判断があり得る訳ですが、今回の判決は、Aの違憲状態だが有効ということになります。
格差が最大4.86倍だった2007年の参院選挙について、2009年判決は、@の合憲なので有効としつつも、「選挙制度の仕組み自体の見直しが必要」と抜本的な制度改革を迫ったものの、2010年の参院選挙までは期間が短かったこともあり、最大5.00倍と僅かながらも格差が広がったので、多数意見としては、ワンランクアップのAの違憲状態だが有効というところでしょうか。
反対意見を毅然と述べる裁判官も立派なものですが、3人とも元弁護士とのことですし、そもそも、弁護士が裁判を起こして、充分な主張・立証をしなければ、このような判決が言い渡されることもありません。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ