以下は、毎日jp(2012年10月11日)からの引用です。
判断能力が十分でない人を支援する成年後見人が親族の資産を使い込んだ場合に刑が免除されるかが争われた業務上横領事件で、最高裁第2小法廷(竹内行夫裁判長)は9日付で、刑は免除されないとの初判断を示した。
「成年後見人の事務は公的であり、財産を誠実に管理する義務を負う」と述べた。
その上で、埼玉県の被告の男(74)の上告を棄却する決定を出した。
1、2審の懲役3年が確定する。
1、2審判決によると被告は養子の成年後見人に選任され、預貯金を管理していたが、約930万円を引き出して競馬などに使い込んだ。
刑法は「直系血族や同居する親族間の窃盗や横領は刑を免除する」と定めている。
後見人を務める親族の着服が起訴されたケースでは、被告側がこの規定を理由に刑の免除を主張する例が少なくなかった。」
裁判所のホームページにも、掲載されていました↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82627&hanreiKbn=02
未成年の後見人に関する平成20年2月18日の最高裁判決↓と、同趣旨の判断ということになります。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=35770&hanreiKbn=02
元々、親族相盗例が設けられたのは、「法律は家庭に入らず」という趣旨であるところ、後見事務は公的性格を有しているからということなのだそうですが、罪刑法定主義という観点からすると、「後見人はこの限りにあらず」と書いている訳でもないのに、「後見事務は公的性格を有しているから」という実質論だけで、不利益な方向に限定解釈してしまって良いのかしらという気がします。
しかも、正式に後見人に選任されていれば刑が免除されないのに対して、本人に判断能力がなくても、後見制度を利用していなければ、多額の使い込みをしても刑が免除されるというのも、おかしな話のように思います。
補佐人や補助人ならどうなのか、という疑問もあります。
直系血族や同居する親族間親族は一律免除という現行法自体を、改正すべきなのではないかと思います。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ