以下は、時事ドットコム(2012/09/28)からの引用です。
「女性5人に対する強姦(ごうかん)致傷と強制わいせつ致傷の罪に問われた塗装工丸山義幸被告(42)の裁判員裁判で、岡山地裁(森岡孝介裁判長)は28日、事件後にパニック障害となった女性を含め被害を認定し、懲役11年(求刑懲役16年)と懲役9年6月(同懲役12年)の判決を言い渡した。
森岡裁判長は、強制わいせつ事件の被害者女性は事件後、動悸(どうき)や震え、過呼吸を起こすパニック障害を発症したと認定。
「症状が重いことを考えれば、『傷害』は成立する」とした。
弁護側は、パニック障害は傷害に当たらないと主張していた。
裁判員を務めた40代の女性会社員は判決後、「心に残る傷は、体に残る傷と同じ。『傷ではない』と言われても、違うと思った」と話した。」
刑の重さの違いから、傷害罪における「傷害」と、強盗致傷罪や強姦致傷罪における「傷害」は同じではなく、後者ではより重大なものに限るべきだとする学説もありますが、判例はこれを否定する立場に立つと言われています。
上記判決の「症状が重いことを考えれば、『傷害』は成立する」との理由からすると、傷害の定義を限定的に解釈しているようにも読めますが、必ずしも、そのような意図がある訳ではないと思います。
いずれにしても、症状が軽い事例で、検察官が「致傷」も付けて起訴したという限界事例ではないので、傷害の定義を限定的に解釈するという先例的な意味合いはないと思います。
「傷害」の定義については、身体の完全性を害することであるとする完全性毀損説と、生理機能や健康状態を害することであるとする生理機能障害説とがあり、判例は生理機能障害説に立つと言われていますが、どちらの説でも、精神的な障害も「傷害」にあたることには異論はないと思います。
7月24日に、最高裁で、PTSDも傷害にあたるという初めての判断がありましたが↓、それは、単に、最高裁まで争われたのが初めてだったということに過ぎず、下級審の判決は沢山あるのではないでしょうか。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82462&hanreiKbn=02
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ