以下は、YOMIURI ONLINE(2012年8月29日)からの引用です。
「妊婦の血液で、胎児がダウン症かどうかがほぼ確実にわかる新型の出生前診断を、国立成育医療研究センター(東京)など5施設が、9月にも導入することがわかった。
妊婦の腹部に針を刺して羊水を採取する従来の検査に比べ格段に安全で簡単にできる一方、異常が見つかれば人工妊娠中絶にもつながることから、新たな論議を呼びそうだ。
導入を予定しているのは、同センターと昭和大(東京)、慈恵医大(同)、東大、横浜市大。
染色体異常の確率が高まる35歳以上の妊婦などが対象で、日本人でのデータ収集などを目的とした臨床研究として行う。
保険はきかず、費用は約20万円前後の見通しだ。
検査は、米国の検査会社「シーケノム」社が確立したもので、米国では昨年秋から実施。
妊婦の血液にわずかに含まれる胎児のDNAを調べる。
23対(46本)ある染色体のうち、21番染色体が通常より1本多いダウン症が99%以上の精度でわかるほか、重い障害を伴う別の2種類の染色体の数の異常も同様にわかる。
羊水検査に比べ5週以上早い、妊娠初期(10週前後)に行うことができる。」
続いて、以下は、朝日新聞デジタル(2012年9月1日)からの引用です。
妊婦へ30分以上の説明条件 新・出生前診断
「妊婦の血液から胎児がダウン症か、99%の精度でわかる出生前診断を行う医療機関が8月31日、会合を開き、妊婦への30分以上のカウンセリングなど検査の条件を確認した。
すでに問い合わせが殺到しており、診断の希望者が急増する可能性がある。
「命の選別」につながるとの声もあり、学会も相談体制作りを急ぐ。
この検査法は、米国の検査会社が昨年10月に商業化した。
妊娠10週以降、妊婦の血液を10ミリリットル採り、血液中に含まれる胎児のDNAを分析、ダウン症検査の精度は99%という。
「これをきっかけに、出生前診断の国民的議論を深めたい」。
31日の会合では、複数の専門家がいる専門外来で、30分以上のカウンセリングをすることなどを、臨床研究に参加する施設の条件とした。
検査のルール作りを進める研究組織には国立成育医研究センター、昭和大など約10施設が参加する予定だ。
早ければ9月にも、倫理委員会で承認された施設から始める。
検査の計画が29日に報道されてから、参加施設には1日で50件以上の問い合わせが殺到している。
一部で準備が遅れており、実施施設名は倫理委員会の承認など正式な手続き終了後に公表するという。
国内では年間約100万人が出産し、出生前診断として約1万6千人が羊水検査を受けている。
新しい検査法は採血だけで、流産の心配もない。
そのため十分な情報がないまま、検査を受け安易に中絶を選ぶ人も増えかねない。
同じ方法で検査ができるとPRしている中国の検査会社はすでに約23万件の実績があると公表。
「日本への具体的な導入見通しは言えない」というが、昨年秋、日本法人を設立した。
成育医療研究センター・左合治彦周産期センター長は「医療現場を混乱させず、検査を金もうけの手段にしないためにも、カウンセリング体制の整った施設で臨床研究を進め、一定の歯止めをかけたい」と話す。
だが、遺伝カウンセリングの専門医資格を持つ産婦人科医は、全国で140人にとどまる。
日本産科婦人科学会は、出生前診断について現在の見解を改訂し、より詳しい検査の意味の説明や相談、支援の強化を目指す。
遺伝相談にのっている北里大の高田史男教授によると、カウンセリングでダウン症の子の特徴や育て方などを説明することで、中絶を選ばない人も少なくないという。
高田さんは「簡単な検査で、安易に命の選別をしてもいいということではない」と話す。
日本ダウン症協会は、この検査が、一般化することを心配する。
検査をする前に十分なカウンセリング体制が必要と、27日付で同学会に求めた。
協会の水戸川真由美理事は「この検査だけでなく、出生前診断そのものに十分な説明やケアがない」と指摘する。
国際的にも各国のダウン症協会が反対声明を出しており、国際ダウン症連盟は、この検査は人権侵害だとして、欧州人権裁判所に提訴した。」
人生観・宗教観・倫理観などによって、意見は分かれると思います。
日本ダウン症協会のホームページに、日本産科婦人科学会宛の要望書が掲載されています↓
http://www.jdss.or.jp/info/201208/youbou.pdf
ちなみに、母体保護法により、妊娠22週未満であれば、人工妊娠中絶は可能であり、経済的な理由による人工妊娠中絶も、できることになっています。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ