2012年08月28日

運転代行


先日、簡易裁判所に行って傍聴席で待っていたら、運転代行に関する労使間のトラブルと思われる事件の裁判をやっていました。

原告も、被告も、弁護士を付けていない、いわゆる本人訴訟でした。

裁判官は、原告である運転代行業者側に対し、「民法715条3項の求償に関しては、たくさん判例があるので、検討してきて下さい。」と言っていました。

民法715条1項は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と定めており、同条3項は、「前2項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。」と定めていますが、判例上、求償権の行使は、「信義則上相当な限度」でしか認められません。

例えば、最高裁昭和51年7月8日判決は、「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被った場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」とした上で、経費節減のため、対人賠償責任保険にのみ加人し、対物賠償責任保険及び車両保険には加入していなかった等の事実関係のもとにおいては、使用者がその直接被った損害及び被害者に対する損害賠償義務の履行により被った損害のうち被用者に対して賠償及び求償を請求しうる範囲は、信義則上右損害額の四分の一を限度とすべきものとしています↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=54209&hanreiKbn=02

この最高裁判決が示すとおり、信義則上相当な限度でしか請求が認められないのは、使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被った場合だけでなく、使用者が直接損害を被った場合も同様です。

また、最高裁判決ではありませんが、5%の限度でしか請求を認めなかった判決もあります。

運転代行業者には、利用客の車を運転中に人身事故を起こした場合の保険は義務付けられているとのことですが↓、やはり、物損事故や随伴車についても、保険は必要だと思います。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/238781498.html

札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
posted by 森越 壮史郎 at 13:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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