2012年08月22日

<無資格過払い請求>元消費者金融社員が主導 債務者食い物


以下は、毎日jp(2012年08月18日)からの引用です。

「弁護士資格がないのに消費者金融に過払い金の返還請求をしたとして6月に司法書士ら男女13人が警視庁に摘発された事件は、大半を占める元消費者金融社員が主導的な役割を果たしていたことが分かった。

債務者名簿を持ち出した元社員が司法書士らと結託し、再び債務者を相手に金もうけをする構図が浮かび上がる。

警視庁は事件を「氷山の一角」とみて警戒を強めている。

「借金があるのは知っている。うちと提携すれば返済できる」。

東京都中野区の司法書士、甲斐勝正被告(67)=弁護士法違反(非弁行為)罪で起訴=のもとに、「整理屋」の小島辰男被告(55)=同=から知人を介して連絡があったのは09年7月。

甲斐被告は風俗店経営に失敗し多額の負債があった。

小島被告は消費者金融大手・旧武富士の元管理職。

独立して貸金業を営んだが、06年1月に最高裁が出したグレーゾーン金利の無効判決を機に、過払い金の支払いが増え、経営が立ちゆかなくなっていた。

債務者名簿から負債のある司法書士を探して「提携」を打診し、請求手続きの代行で稼ごうと考えた。

過払い金を支払う立場から請求する側にまわるという逆転の発想。

「みんなそうやってシフトしている」。

調べにそう語ったという。

小島被告らに顧客を紹介したのは、旧武富士を経て外資系の消費者金融で07年まで管理職だった永田右子被告(52)=同法違反(周旋)罪で公判中=ら「周旋屋」。

元職場の同僚から入手した債務者名簿を使い、電話で債務者を勧誘していた。

09年11月からの約2年間で、小島被告らは司法書士名義で約1300人の過払い金計約32億円の返還請求を受任。

大半が司法書士に代理交渉が認められない1件140万円を超える請求だった。

すでに消費者金融側から計約12億円の和解金が支払われている。

小島被告らは顧客と結んだ契約(報酬34%)に基づき、計約4億円を受け取っていた。

日本弁護士連合会が定める和解の報酬上限(20%)を超えており、債務者らは受け取るべき過払い金を搾取されていた形になる。

また小島被告らは報酬のうち55%を永田被告ら周旋屋に渡していた。

甲斐、小島両被告らの起訴状によると、昨年6〜11月、債務者11人から1件140万円を超える過払い金返還請求を受任して和解交渉を行い、和解金のうち計約652万円を報酬として得たとしている。

永田被告らは同5〜10月、これらの債務者に過払い金の返還請求を勧めて甲斐被告らに周旋し、報酬のうち計約359万円を得たとされる。

◇司法書士法、周旋禁止なし

今回の事件では、司法書士の制度上の不備も浮かび上がった。

周旋をした永田被告らは法廷で「司法書士法には弁護士法のように周旋の禁止事項がないと聞き、司法書士に紹介するのは合法だと思った」と弁解した。

弁護士法では整理屋や周旋屋との提携が禁止され、弁護士や提携業者が刑事罰を受けるが、司法書士法には同様の処罰規定がない。

司法書士は03年の司法書士法の改正で、140万円以下の借金に関する交渉権と訴訟代理権が認められた。

今回、140万円を超える返還請求を受任したため、「無資格で弁護士業務をした」とする弁護士法違反で逮捕されたが、140万円以下であれば罪に問われなかったことになる。

元消費者金融社員が司法書士などを取り込んで主導したケースの摘発は今回が初めてだが、業界内では「整理屋や周旋屋として暗躍する元社員は多い」との見方が広がる。

ただ、司法書士らと提携して不正発覚の隠れみのにするなど手口も巧妙なため、立件は困難という。

捜査関係者は「元社員が救済に見せかけて金もうけするのは債務者からの『二重取り』。非常に悪質だ」と強調する。

日本司法書士会連合会は「提携をしている司法書士のうわさは承知しているが、実態は把握できない」と明かす。

同会は提携の排除に向けて司法書士法を改正し、罰則規定を設けることを目指すが、めどは立っていないという。

担当者は「返還請求の勧誘の電話がかかってくること自体、あり得ない。債務者の不利益になる可能性が高いので応じないで」と注意を呼びかけている。」



この報道↓の続報ですね。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/274528113.html

風俗店経営に失敗した司法書士と、過払金請求にシフトする元消費者金融社員ですか…。

弁護士法72条は、弁護士ではない者が法律事務を取り扱ったり、周旋することを禁じています(非弁行為)。

充分な法的知識もなく、また弁護士法その他の規制も及ばない者が、法律事務を取り扱ったり、周旋することを許すと、当事者に様々な不利益を及ぼす可能性が高いからです。

弁護士法27条は、弁護士が、こられの者から事件の周旋を受けたり、自己の名義を利用させることを禁じています。

非弁行為を行う者と結託し、非弁行為を助長することを禁止するためです。

2003年の司法書士法の改正で、司法書士にも、140万円以下の事件に関する交渉権と訴訟代理権が認められた訳ですから、同様の弊害は当然あり得る筈ですが、驚いたことに、司法書士法には、同様の規定はないのですね。

ですので、今回起訴されたのは、司法書士には認められない140万円を超える過払金請求に関する弁護士法違反のみ、ということです。

それにしても、約32億円の過払金に対して、回収した和解金は約12億円ということですので、請求金額の僅か4割弱で和解しているのに、報酬は34%で約4億円、本人の手元に残るのは約8億円、本来支払われるべき過払い金の僅か4分の1程度ということになります。

司法書士は、本来、140万円を超える事件の代理人となることはできないのですが↓、大きな収入につながる事件を手放したくないので、大幅に譲歩して和解せざるを得なかったのではないでしょうか。
http://morikoshi-law.com/faq1-4.html

なお、上記報道で触れられている日弁連の「債務整理事件処理の規律を定める規程」↓は、2011年4月1日以降に新たに受任する事件から適用されることになったものであり、それ以前に受任した事件には適用されません。
http://www.nichibenren.or.jp/contact/cost/legal_aid/saimuseiri.html

上記規程では、過払金に関する報酬は、訴訟によらない場合は回収額の20%以下、 訴訟による場合は回収額の25%以下ということになっていますが、私自身は、ほぼ満額の回収を目指すとどうしても訴訟になることが多いので、訴訟による場合を含めて、一律20%+消費税(実費別)にしています。

同じく、解決報酬やら減額報酬というのもありますが、こんなの貰っている弁護士がいるのですかねという感じです。

でも、本当に大切なのは、報酬の多寡ではなく、減額交渉にしても過払金請求にしても、どれだけ妥協しないかだと思うのですが。

上記報道でもわかりますが、認められるべき過払金の4割程度しか回収しないのと、ほぼ満額回収するのとでは、雲泥の差があります。

過払金返還請求に限らず、交通事故による損害賠償請求や、その他のどんな事件でも、同じことだと思います。

札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
posted by 森越 壮史郎 at 12:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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