以下は、カナロコ(神奈川新聞社)(2012年7月19日)からの引用です。
「経営破綻した消費者金融「武富士」への借金返済が利息制限法上は済んでいるにもかかわらず、返済を強要され、支払わされたのは不当として、県内の50代の女性ら11人が同社の武井健晃元社長に損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁が元社長に計約890万円の支払いを命じていたことが19日までに、分かった。
原告代理人によると、同様の訴訟は全国で起こされているが、元経営者の責任が認められたのは初めてという。
判決は17日付。
消費者金融などの貸金業界で長年、任意の支払いであれば利息制限法の上限年利(15〜20%)を超えても有効とみなされ、適用されてきた「みなし弁済」について、2006年1月に最高裁がその成立を否定する判決を示し、法定利息を超えた請求は原則、禁止された。
横浜地裁判決は、最高裁判決などから「被告や同社は、顧客が過払いしていることや、返済が必要ないことを知り得たにもかかわらず、借金の返済を請求し、弁済を受け取っており、不法行為に当たる」と判断した。
原告代理人の勝俣豪弁護士は「元社長に、支払い責任を負わせる判決は画期的」と話した。
被告側は、判決を不服として18日、控訴した。」
貸金業者そのものに対する損害賠償請求ですら、最高裁平成21年9月4日第2小法廷判決↓は、「一般に、貸金業者が、借主に対し貸金の支払を請求し、借主から弁済を受ける行為それ自体は、当該貸金債権が存在しないと事後的に判断されたことや、長期間にわたり制限超過部分を含む弁済を受けたことにより結果的に過払金が多額となったことのみをもって直ちに不法行為を構成するということはできず、これが不法行為を構成するのは、上記請求ないし受領が暴行、脅迫等を伴うものであったり、貸金業者が当該貸金債権が事実的、法律的根拠を欠くものであることを知りながら、又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに、あえてその請求をしたりしたなど、その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られるものと解される。この理は、当該貸金業者が過払金の受領につき、民法704条所定の悪意の受益者であると推定される場合においても異なるところはない。」と判示し、借主側の上告を棄却していますので、元経営者の責任までもが認められたというのは、本当に画期的なことです。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=37954&hanreiKbn=02
我々の感覚では、「返す義務がないお金を取り立てるのは、詐欺や恐喝じゃないの?」と思うのですが、裁判所はそれを認めてくれない。
貸金業者は、一応、利息制限法による制限利率を超える金利を徴収することができることになっていたので、それが不法行為ということになれば、監督官庁等の責任追及ということになるのでは、という配慮が働いているように感じます。
この判決を書いた裁判官は、上記最高裁判決の存在を当然知りながら、上記のような素直な感覚から、敢えて、問題提起として、判決を書いたのだと思いますが…。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ