以下は、YOMIURI ONLINE(2012年7月12日)からの引用です。
「児童ポルノ画像を掲載したウェブサイトのアドレスを別のサイトで紹介した行為が、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)に当たるかが争われた事件の上告審で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は9日の決定で被告の上告を棄却した。
懲役8月、執行猶予3年、罰金30万円の1、2審判決が確定する。
決定は裁判官5人のうち3人の多数意見。
弁護士出身の大橋正春裁判官と裁判官出身の寺田逸郎裁判官は反対意見で、「児童ポルノの所在地を情報として示すだけでは公然陳列に当たらない」と、ほう助罪の成立の余地を指摘し、審理を高裁に差し戻すべきだとした。
同法違反に問われたのは、京都市の会社員・開原嘉樹(かいはらよしき)被告(53)。
1、2審判決によると、開原被告は2007年、共犯者の男(51)(有罪確定)と共謀し、男が運営していたサイトで、児童ポルノ画像を載せたサイトのアドレスを明らかにした。」
3対2というのは、理論的には、当然あり得ますが、非常に珍しいことだと思われ、それだけ、ギリギリの判断だったということではあります。
裁判所のホームページの裁判例情報に掲載されるかと思いましたが、どうやら掲載されないようなので、詳細な事実関係がわかりませんが、単にアドレスを紹介しただけで、公然陳列の「正犯」というのは、いかがなものでしょうか。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条4項は、「児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」と定めています。
すなわち、自ら不特定多数の者に提供することと、自ら公然と陳列することとを、等しく処罰するものとしている訳です。
児童ポルノ画像を売っている人を紹介する行為は、売っている人(=提供)のほう助罪となる余地はあっても、正犯とならないことについては、異論はないと思います。
確かに、インターネット上では、紹介されたアドレスを入力すれば、あるいは、リンクが設定してあればクリックするだけで、簡単に児童ポルノ画像にアクセスすることができます。
しかし、程度の差と質的な差は、きちんと区別しなければならないというのが、罪刑法定主義というものだと思いますし、自ら児童ポルノ画像を掲載するのと、そのアドレスを紹介するのとでは、質的に異なるのではないかと思います。
反対意見の言うとおり、ほう助罪ではダメなんでしょうか?
ただ、これで判決確定ですので、ご注意を。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ