以下は、朝日新聞デジタル(2012年6月28日)からの引用です。
くも膜下出血につながる「脳動脈瘤(りゅう)」は、7ミリ以上になると破裂のリスクが高まり、7〜9ミリの大きさでは年間に60人に1人が破裂することがわかった。
こぶの位置や形によってもリスクが高まった。
日本脳神経外科学会が約6千人を対象に追跡調査した。
脳ドックでこぶが見つかっても、何ミリ以上になると破裂しやすいか、明確なデータはなかった。
28日付米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」で発表された。
未破裂脳動脈瘤は成人の5%程度にあるとされる。
くも膜下出血は発症すると3分の1が亡くなり、30〜40代の患者も多い。
同学会は2001年1月から04年4月までに全国の医療機関で未破裂の脳動脈瘤が見つかった5720人、計6697個のこぶの経過を最長8年間追った。
患者の3分の2は女性で、平均年齢62.5歳、こぶの大きさは平均5.7ミリだった。
全体の破裂率は年間0.95%で、3〜4ミリは0.36%、5〜6ミリは0.50%だった。
しかし、7〜9ミリになると1.69%に上がり、10〜24ミリは4.37%、25ミリ以上だと33.40%が破裂していた。
こぶができる場所や形によってもリスクに違いがあった。
大脳の太い動脈をつないでいる交通動脈という血管にできたこぶのリスクは、大脳の中心を流れる中大脳動脈のこぶより2倍ほど高かった。
また、形がいびつなこぶは、滑らかなこぶより、1.63倍リスクが高かった。
日本脳卒中学会が09年に作った指針では、海外のデータなどから、平均的な寿命まで10〜15年以上あり、こぶの大きさが5〜7ミリ以上なら治療を検討することにしている。
治療法には、頭蓋骨(ずがいこつ)を切開し、こぶの根元をクリップではさむ「開頭クリッピング術」や、足のつけ根の動脈からカテーテルを通し、こぶに金属製のコイルを詰める「血管内治療」がある。
しかしいずれの治療も5%程度の確率でまひやしびれ、重い後遺症などが出る可能性があり、脳ドックで脳動脈瘤が見つかっても、治療すべきかどうか判断が難しい。
脳ドックは1980年代末から広まり、日本脳ドック学会によると、02年の時点で少なくとも約6万人が受診している。」
個人的には、医療過誤の相談の中でも、未破裂脳動脈瘤の治療に伴うトラブルは結構多いように感じていましたが、5%程度の確率で後遺症が出るということは、20人に1人はただでは済まないということですから、やはり相当な確率ですね。
裁判所の判例検索システム↓に、「未破裂脳動脈瘤」と入力して検索しても、結構な数の判決が出てきます。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0010?action_id=first&hanreiSrchKbn=01
裁判所の判例検索システムには、全ての判決が掲載されている訳ではありませんので、未掲載の判決もあるでしょうし、裁判になっても和解で解決している事件あるでしょうし、裁判外で解決している事件もあるでしょうから、全体としては、かなりの件数になるでしょうね。
この類の事件では、手技ミスという過失だけでなく、説明義務違反が必ずと言って良いほど問題となりますが、今回このような調査結果が発表された以上、少なくとも今後は、破裂のリスクと、治療のリスクの双方を、きちんと数字を示して説明する必要がありますね。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ