以下は、YOMIURI ONLINE(2012年6月18日)からの引用です。
「「AIJ投資顧問」の年金消失問題で、顧客の年金基金から運用資金計約数十億円をだまし取った疑いが強まり、警視庁は18日、同社の浅川和彦社長(60)について、詐欺と金融商品取引法違反(契約に関する偽計)の疑いで逮捕状を請求した。
同庁は、傘下の「アイティーエム証券」の西村秀昭社長(56)ら数人についても近く強制捜査に踏み切る見通しで、1千数百億円に上る消失した年金資金の流れなど本格的な実態解明に乗り出す。
捜査関係者によると、浅川社長は昨年、投資一任契約を結んでいた関東甲信越地方の厚生年金基金と企業年金基金に対し、アイティーエム証券を通じて水増しした価格で海外ファンドを販売し、数十億円をだまし取った疑いが持たれている。」
金融商品取引法違反(契約に関する偽計)でも、10年以下の懲役等と、結構重いです。
一方、詐欺罪は、同じく10年以下の懲役等と、一見大差ないですが、組織的に行った場合は、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律により、1年以上の20年以下の懲役となります。
敢えて、詐欺罪も加えたということは、重罰を視野に入れたということなのかも知れませんが、どちらの罪でも、複数の犯罪で併合罪加重すれば1.5倍、さすがに懲役30年ということはないでしょうから、むしろ、金融商品取引法↓という特別法違反だけにしか該当しないなどという生易しい犯罪ではないと考えているということでしょうか。
http://www.fsa.go.jp/policy/kinyusyohin/index.html
浅川社長は、国会の証人喚問で「だますつもりはなかった」と強調していましたが、虚偽の運用実績を示して勧誘し、新規顧客からの受託資産を解約顧客への支払いなどに充てていたとのことですので、充分詐欺罪は成立すると思いますし、詐欺罪で立件すべきだと思います。
投資顧問会社という特殊な事情はありますが、何年間も損失を繰り返していたのに、好業績を装い配当金を支払い続け、資金が底を着きそうになったら、虚偽の運用実績で新規顧客から資金をかき集め、それを解約した顧客への支払や、配当金の支払いに充てておいて、「いつか挽回できると思った」というのは、宝くじや競馬で当たったら返そうと思ったのと、大差ないと思います。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ