以下は、時事ドットコム(2012/06/11)からの引用です。
「証拠品の木刀をすり替えたとして証拠隠滅罪に問われた大阪府警八尾署の元警部補久保優二被告(54)=依願退職=ら3人の判決が11日、大阪地裁であった。
島田一裁判長は「現職警官による証拠偽造事件で、厳しく非難されなければならない」と述べ、久保被告に懲役3月、執行猶予2年(求刑罰金20万円)を言い渡した。
巡査部長三好貴幸(37)、同田口洋平(33)両被告=いずれも起訴休職中=は罰金20万円(求刑は各罰金10万円)とし、3人とも求刑を上回った。
島田裁判長は量刑理由について、「自己保身の動機に酌量の余地はない」とした上で、「証拠の偽造が社会問題となっており、この種の犯罪を防止する必要性が高い」と述べた。」
警察官の不祥事自体は、余りにも多すぎて、コメントする気になりません↓
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/police_scandal/
しかし、この事件は、判決が求刑を上回るという点だけでなく、そもそも、検察官が略式罰金にしようとしたのを裁判官が略式不相当と判断したという点でも、なかなか興味深いです。
という訳で、以下は、MSN産経west(2012.3.27)からの引用です。
証拠品捏造事件、警官らを「略式不相当」大阪簡裁判断、正式裁判へ
「大阪府警八尾署の警察官3人が無関係の木刀を証拠品として捏造(ねつぞう)したとして今年1月、証拠隠滅などの容疑で書類送検された事件で、検察側が3人を証拠隠滅罪で略式起訴したものの、大阪簡裁(立川唱寛(まさひろ)裁判官)が「略式不相当」と判断していたことが26日、分かった。
今後、公開の法廷で審理される。
判断は8日付。
起訴されたのは、依願退職した久保優二元警部補(53)=大阪府高槻市▽三好貴幸巡査部長(37)=大阪市港区▽田口洋平巡査部長(33)=堺市南区−の3人。
起訴状などによると、3人は昨年10月、事件の証拠品の木刀がなくなっていると思い込み、監査が迫っていたため同署にあった無関係の木刀で代用。
証拠品用の札を結びつけて保管庫に収納するなどして、証拠を捏造したとされる。
実際は紛失は勘違いで、木刀は押収されずに関係者が所有したままだった。
平成22年12月には、任意の取り調べで暴言を吐くなどして脅迫罪で略式起訴された府警東署の警部補についても大阪簡裁が略式不相当と判断。
正式裁判により罰金刑が確定している。」
正式裁判では、公開の法廷において、審理が行われ、判決が言い渡されますが、罰金刑となる事件はたくさんあり、全ての事件を公開の法廷で行っていたのでは処理しきれないため、多くの事件では、公開の法廷での裁判は行わず、裁判官が証拠の書類を読むだけで罰金刑が言い渡されており、この簡易な手続のことを、略式罰金手続と言います。
裁判官の略式不相当との判断には、単に公開の法廷で審理すべきというだけにとどまらず、罰金ではなく、懲役刑が相当という意味合いもあるように思います。
また、検察官の求刑は、飽くまで検察官の意見に過ぎませんので、求刑を上回る判決というのは、法律的には何ら問題はありません。
それにしても、警察官等に対する公務執行妨害罪の場合には、前科前歴がなくても、ほぼ100%身柄を拘束され、ほぼ100%正式裁判を求められ、ほぼ100%懲役刑が求刑されるというのが私のイメージですが、それに比べると、捜査機関が証拠を捏造するという極めて重大な問題なのに、書類送検だけで、略式罰金を求めたり、正式裁判になっても罰金刑を求めたりと、検察官の量刑感覚は、余りに軽すぎるのではないでしょうか。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ