以下は、毎日jp(2012年06月03日)からの引用です。
「児童買春・児童ポルノ禁止法に違反している」という告発文書を突然送りつけ、告発を取り下げる代わりに現金を要求する架空請求詐欺が全国で急増している。
国民生活センター(東京)によると、相談は5月31日現在、338件に上り、実際に現金を支払ったケースもあったという。
同センターは「指定された番号には絶対に電話しないで」と呼びかけている。
奈良県の40代の女性に「告発通知」が封書で届いたのは同月29日。
同法違反事件の証拠資料から、女性が以前、違法わいせつDVDなどを購入したことが発覚したという「全く身に覚えがない」話だった。
「被害者の強い意向で告発する」「警視庁、管轄警察署からの家宅捜索、事情聴取の出頭要請を受けることになる」。
不安をあおる文章に続き、法律の条文も記載していた。
また、告発を取り下げるには6月1日までに必ず電話で連絡するよう要求。
大阪市淀川区の法律事務所と担当者名、電話番号が書かれていた。
女性は「詐欺だ」と思い、すぐに警察へ相談した。
この法律事務所は架空で、記者が何度か電話したが、話し中状態で、つながらなかった。
女性は取材に、「どこで(名前や住所などの)個人情報が漏れたのか。気持ちが悪く、腹立たしい」と憤った。
奈良県警によると、県内ではNPO法人をかたる団体から似た内容の「告発状」が届いた事例が、今年3月に2件確認されている。
国民生活センターによると、昨年8月〜今年1月に4件だった同種事案の相談件数は▽2月47件▽3月125件▽4月127件と急増。
5月は35件だが、これから増える可能性があるという。
各消費生活センターへ相談し、未然に防げたケースがほとんどだが、札幌市消費者センターでは、40代男性が40万円をだまし取られる被害が報告されている。
国民生活センターは「告発通知や告発状を送り、法律の条文まで載せて不安にさせるという意味では最新の手口。対応に困ったら必ず最寄りの消費生活センターに相談してほしい」としている。」
国民生活センターの注意喚起は↓
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20120502_2.html
PDFファイルの報告書本文↓の末尾には、告発文書の写しも掲載されています。
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20120502_2.pdf
今回の告発詐欺は、違法わいせつDVD等の購入なので、身に覚えのある人は少数で、被害に遭う方も余りいないと思います。
しかし、今国会で違法ダウンロード罰則案が可決成立し、10月1日から施行されることになると、違法ダウンロード告発詐欺が横行し、被害も拡大しそうな気がしますので、事前のアナウンスが必要なのではないでしょうか。
という訳で、長文ですが、以下は、毎日jp(2012年05月24日)からの引用です。
違法ダウンロード罰則案、国会提出へ ワンクリックで犯罪?
「音楽や映像を違法に複製した「海賊版」を、インターネット上に配信する違法なアップロード行為だけでなく、海賊版をパソコンや携帯電話に取り込むダウンロード行為にも罰則を科す法案の修正案が今国会に提出される見通しだ。
CDなどの売り上げ不振が「海賊版が多くダウンロードされたため」だとする音楽業界の意向を受けた動きだが、ネットに違法な音楽や映像があふれている現状に、利用者側から「パソコンのワンクリックで誰もが犯罪者になる恐れがある」と懸念の声も上がっている。
◆手続き
◇利用者側、懸念の声
海賊版の音楽や映像をアップロードする行為は90年代に違法となり、現在は「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金」が科せられる。
一方、ダウンロードは2010年の著作権法改正で違法とされ、民事上の責任を問われることになったが、罰則は「違法性が軽微」として見送られた。
前回の法改正翌年の11年後半、自民、公明両党が音楽業界の意向を受けて、ダウンロードに罰則を設ける「私的違法ダウンロード防止法案」を議員立法で準備したが、提出には至らなかった。
今国会では、違法ダウンロードに「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」を科す法案を想定。
政府が提出する著作権法改正案(DVDのコピーを規制する案など)を修正する形で、自公両党が議員提案する見通し。
自民党で刑罰化を主導する河村建夫元官房長官は「政府提案の法案にするには文化庁の審議会に諮るなど時間がかかり、修正案で出すことになった」と緊急性を強調する。
衆院文部科学委員会所属の与野党委員によると、理事の間では、質疑終了後に修正案を提案し、論議をせずに衆院通過を図る異例の筋書きも検討されているという。
民主党内では、刑罰化への反対論も出て、4月中のとりまとめはできなかったが、政府提出の著作権法改正案成立を条件に容認する方向になっている。
同党の鈴木寛・元副文部科学相は「(自分が所属する)参院では参考人質疑もするなど慎重に取り組みたい」と話す。
修正案が提出され、今国会で成立すれば、10月1日に施行されることになる。
◆背景
◇売り上げ減、音楽業界「深刻」
修正案には、違法ダウンロードが音楽CDの売り上げ減につながったとする日本レコード協会など業界団体の強い意向がある。
.2年前にダウンロードが違法とされた後も「被害は減っていない。ネットに違法複製ファイルが一つでも出ると、コピーされて瞬時に広がってしまう。だからアップロードする人を1人捕まえても手遅れだ。供給だけでなく、需要も無くさなければ、抜本的な対策にはならない」としており、団体は焦りを募らせている。
協会は2010年8月、全国の12〜69歳の男女約5000人にネットを通じてアンケートを実施。
うち1200人余りが「違法ダウンロード経験あり」と答えた。
中には違法でないものも含まれていたが、協会はこれを元に日本全体の人口にあてはめて、音楽・映像ファイルの違法なものを含むダウンロード数を年間で43・6億ファイル、金額にして6683億円と推計した。
協会は「このうちの4割が違法とみられ、あとは不明」と分析している。
協会は、10年にダウンロードが違法化された時点から「罰則を」と主張。
協会などの意向を受けた俳優の杉良太郎さんらも国会議員を回って法改正を働きかけた。
協会などは「違法ダウンロードは被害者の告訴を受けて捜査する親告罪で、捜査の慎重さは担保される」と言い、誰もが捜査対象になるわけではないと強調する。
河村元官房長官も「取り締まるためではなく、健全な著作権保護を促す教育効果や抑止力効果を狙ったもの。個人的には(最高懲役2年の)量刑も(重いという指摘があれば)こだわらない」と話す。
◆問題
◇故意の基準あいまい
修正案は、一般のユーザーが事件に巻き込まれる恐れが懸念されている。
11年、ファイル共有ソフトを通じて、人気アニメの映像をネット上に流した疑いで、札幌市の女が著作権法違反容疑で逮捕された。
女が配信した映像が200万件以上違法ダウンロードされており、修正案が成立すれば、罰則の対象になる可能性もある。
修正案は「違法だと分かったうえで」ダウンロードした場合が刑罰の対象と規定する。
しかし、元検事の落合洋司弁護士は「明確に違法だと知っていた場合と、まったく知らなかった場合の間には(故意の)認識に濃淡がある。故意とされるべきでないあいまいなものも故意と決めつけられる恐れがある」と懸念する。
日本弁護士連合会刑事法制委員会委員長の神(じん)洋明弁護士も「違法かどうかを一般の人に判断させるのは酷だ。捜査側が主導権を握って、被害者に告訴を促し、見せしめ的に著名人などを摘発することも考えられる」と指摘する。
さらに「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」という量刑についても、他人のID・パスワードを無断で使用するなどした場合に適用される不正アクセス禁止法(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)と比較して「重すぎる」と話す。
文化審議会の著作権分科会小委員会委員を務めたジャーナリストの津田大介さんは「前回の法改正を議論した小委員会には、ダウンロードに刑罰を科すのはバランスを欠いていると考える人が多かった。レコード協会が(違法化を)周知していない状況で、一部の業界の意見を受けて法律を変えることに懸念と憤りを覚える」と話す。」
それにしても、国民生活センターの発表情報↓をみると、実に様々なトラブルが発生していることがわかりますね。
http://www.kokusen.go.jp/news/news.html
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ