以下は、MSN産経ニュース(2012.4.11)からの引用です。
「横浜弁護士会所属の男性弁護士(67)が、代理人を務めた遺産相続をめぐる民事訴訟で敗訴し、依頼人の神奈川県鎌倉市の60代男性から頼まれた控訴手続きをせずに、判決が確定していたことが10日、弁護士や男性らへの取材で分かった。
弁護士は「多忙で控訴手続きを忘れた。あってはならないミス。依頼人に申し訳ない」と話している。
訴訟は、男性の両親の借地権など相続財産をめぐり、親族が男性を相手に平成18年に横浜地裁に提訴。
22年11月、男性に約1100万円の支払いを命じる判決が言い渡された。
男性は判決を不服として控訴する意思を弁護士に伝え、同年12月、着手金30万円と控訴手続きに必要な印紙代19万円を支払った。
しかし、弁護士から「控訴するのを忘れた」との連絡が入り、控訴期限が過ぎて判決が確定したことが判明。
男性は横浜地裁に再審を請求したが、先月5日に棄却された。
男性によると、弁護士は22年12月に謝罪した上で、鎌倉市内の弁護士の自宅を売却し、判決で支払いを命じられた金額の半額を男性に支払うことなどを伝えたが、先月26日に100万円が支払われただけという。
弁護士は「半額を払うと口頭でも文書でも伝えたが、より適切な額を支払おうと考えが変わった。おわびとして100万円を支払ったが、さらに支払うかどうかなどを依頼人と話し合いたい」と説明。
「控訴手続きについてはこちらのミスであり本当に申し訳ないが、敗訴となった1審で必要な主張は全て出し尽くした」と話している。
男性は、弁護士について横浜弁護士会への懲戒請求と、損害賠償請求訴訟を起こすことを検討している。」
期限の徒過は、弁護過誤の典型例のひとつですが↓、挽回のしようがないので、本当に恐ろしいです。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/245698985.html
本件では、再審請求したとのことですが、認められる筈がないことは、初めから、わかり切っていることです。
約1100万円の支払いを命じた1審判決が、控訴できずに確定してしまったので、弁護士が、依頼者に対し、債務不履行による損害賠償義務を負うことは当然ですが、だからと言って、当然に、約1100万円全額の支払義務を負うという訳ではありません。
控訴することによって、1審判決が逆転した可能性がどの程度あったのかによって、賠償額は異なってくると思いますが、弁護士賠償責任保険では、期待権の侵害に対する慰謝料的なものとして、数十万円程度が認定されるにとどまるのが一般的ですので、弁護士が支払った100万円という金額は、場合によっては、充分以上の金額なのかも知れません。
しかしながら、「半額を支払うと口頭でも文書でも伝えた」以上、武士に二言はないのでは?という気はします。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ