2012年04月02日

「口コミ」批判:投稿者の情報開示求め、富山の病院が提訴


以下は、毎日jp(2012年4月1日)からの引用です。

「インターネット上での匿名の投稿で名誉やプライバシーが侵害されたとして、投稿者に関する情報の開示を求める動きが広がりつつある。

「口コミ」サイトに「患者を人間と思わない」などと投稿された富山県高岡市の産婦人科病院がこのほど、投稿者情報の開示を求める訴訟を富山地裁高岡支部に起こした。

専門家は「根拠なしに悪意で相手をおとしめる誹謗(ひぼう)中傷は犯罪にあたる」と警鐘を鳴らす。

訴状によると、昨年5月、病院の口コミ情報サイトに同病院について、具体的事実を示さず「患者を人間だと思っていない医者がいます。軽い気持ちで診療を受けると、一生心の傷を受けます」などと投稿があった。

投稿者は匿名だが、NTTコミュニケーションズ提供のネット接続サービスの利用者であることが病院の調査で判明。

病院は同社に投稿者情報の開示を求めたが、拒否されたという。

病院側は「(投稿は)病院の社会的評価を低下させることに主眼がある」と指摘。

投稿者が判明次第、損害賠償を求める方針だ。

同社は取材に対し、「係争中でコメントできない」としている。

ネット犯罪に詳しい甲南大法科大学院の園田寿教授(刑事法)の話

公共性のある事実を公共目的で投稿した場合、それが真実であれば罪に問われないが、具体事例を示していない場合は、信用毀損(きそん)罪にあたる可能性もある。

投稿が思わぬ被害を与えることもあり、情報を発信する時は、自覚が必要だ。」


NTTコミュニケーションズとしては、自らが利用者から損害賠償請求をされないように、任意では情報は開示せず、判決には従うということなのでしょうか。

先日の米グーグルの報道に関連しても書きましたが↓、書き込みの削除がいかに難しいかがわかります。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/260692842.html

名誉毀損は、「品性、徳行、名声、信用その他の人格的価値について社会から受ける客観的評価(社会的評価)を低下させる行為」とされていますが、以下のような判例法理が形成されており、@公共性×A公益性×B真実性(又は真実と信じるにつき相当の理由)があれば、合法とされています↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/244821039.htm

「事実を摘示しての名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには、上記行為には違法性がなく、仮に上記証明がないときにも、行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定される(最高裁昭和37年(オ)第815号同41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁、最高裁昭和56年(オ)第25号同58年10月20日第一小法廷判決・裁判集民事140号177頁)。

一方、ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、上記行為は違法性を欠くものというべきであり、仮に上記証明がないときにも、行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当な理由があれば、その故意又は過失は否定される(最高裁昭和60年(オ)第1274号平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2252頁、最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決)。」

今回の投稿は、具体的事実を適示していないため、Bの要件を主張・立証する余地がないので、名誉毀損にあたる可能性が大きいと思います。

札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
posted by 森越 壮史郎 at 12:27| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
小さな歯科医院を開業しているものです。ネットで検索してこのブログへ行きつきました。
先日患者さんからクレームがありました。なんでも治療中に水が顔にかかったのに気付れず治療を続行され、精神的な苦痛を味わされたというものでした。初診時からスッタフや私に威張り散らし、こちらの治療についての説明を聞かないので困っていたのですが、謝り倒したのですが納得されないようでしたので今回で治療を終わらせてくださいとお伝えして、治療を終えたのですがその日に口コミサイトへ悪口が投稿されていました。
以前にも同様のことがあり、歯科医師会やその他に相談しても「口コミサイトにかかれるのは仕方が無いですよ。」で終わるのを疑問に思っていました。医療機関とは言え、個人医院ですので公共性が高いと言えるのか?また、患者さんの性格に問題がある場合や誤解・思い込みを一方的に書かれる現状において病院側がそれに対して対抗できず「仕方ない」で我慢しなくてはならないのは余りに理不尽で人格権を棄損するように思えます。そうで無くても競争が激しくまた、日々発展する医療技術のため研さんしていますが、こうしたことが起きると本当に気が滅入って身体にも悪いです。
最近では医師名を名指しで出すような口コミサイトも散見されます。法的な整備や、法律的な議論が必要な様に思います。
Posted by やなぎはら at 2015年05月31日 20:19
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック